ペリー来航を描いた米ミュージカル
"Pacific Overture"(太平洋序曲)


 本年はペリー提督の黒船来航150周年に当たる記念すべき年です。日米関係は、この一世紀半の間に様々な困難を共に乗り越えましたが、"Pacific Overture"(太平洋序曲)には、日米交流の文化面での緊密さが見事に表れています。 
 スティーブン・ソンドハイム氏(作詞・作曲)とジョン・ワイドマン氏(台本)のミュージカル"Pacific Overture"は、1976年にニューヨーク・ブロードウェイで初演されました。本作品の舞台は、江戸時代の鎖国令下の日本。ペリー提督率いる黒船の船団は、1853年に日本の開国を要請します。巨大な黒船と鬼のような形相をしたアメリカ人に圧倒されながらも、黒船対策として作戦を練る漁師のジョン万次郎と幕府の役人、香山。物語はこの二人を中心に、黒船来航による開国から、近代化への道を進む日本の歴史がアメリカ人の視点から描かれています。
 万次郎と香山は一度は、封建社会の日本を西洋人の侵略から守ることに成功しますが、外国人の到来を完全に阻止することはできませんでした。その後、日本は再度開国を迫られ、ついに国内は、開国派・攘夷派、幕府派・尊皇派等に分かれ西洋化が進みます。国内で意見が対立する中、万次郎と香山も時代の流れに感化されます。香山は西洋文明にすっかり魅せられ、アメリカに敬服します。一方で、最初の黒船来航での功労により、幕府から武士の身分を与えられた万次郎は、国粋主義者となります。一時は、アメリカの要望に屈することないよう力を合わせた青年達でしたが、最終的に二人は対立し、皮肉な運命の道を歩むことになります。 
 ソンドハイム氏とワイドマン氏は、明治維新から現代までの歴史を豊かな想像力を駆使して表現し、観客に日米が共に歩んできた道を考えさせます。残念ながら、オリジナル版"Pacific Overture"のミュージカル公演はすでに終了していますが、いまや国際的に活躍する演出家の宮本亜門氏が、現在"Pacific Overture"の2004年秋のニューヨーク公演に向け、製作に取り組んでいます。2000年10月に、日本の新国立劇場で宮本氏演出の同作品を観劇したソンドハイム氏に強く勧められ、宮本氏は、これまでにニューヨークとワシントンでも公演を行いました。日本人の演出家により甦った"Pacific Overture"は、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト等米国の新聞各紙に絶賛されました。