遣米使節団

南北戦争前夜のアメリカ社会

このような熱狂的な歓迎の背景には、アメリカを初めて訪問する未知の日本人、神秘の日本への強い関心があったことは言うまでもありませんが、それにしても当時のアメリカ市民の反応は異常ともいえるものでした。それを解く鍵は、当時の差し迫ったアメリカ社会の危機的状況ではないでしょうか。幕府ミッションがワシントンに到着した数日後、共和党がリンカーンを大統領候補に指名し、南部諸州に対し挑戦状を突きつけました。当時、南部分離独立が現実の問題としてあり、内戦が起こるかもしれないという恐怖がアメリカ全土を覆っていたのです。不安と恐怖を抱えたアメリカ市民が、神秘的で、黄褐色の肌をして、不思議な服を着た旅行者を熱狂的に歓迎することで、厳しい現実から一時的な逃避をしようとしたという側面は否定できません。
 1860年11月、リンカーンが大統領選挙に勝利すると南部諸州が独立を宣言し、翌年4月には内戦が始まりました。