NY邦人メンタルヘルスネットワーク定例会 議事録

日時:
2018年6月15日(金) 午後6時から8時
場所:
在ニューヨーク日本国総領事館18階
テーマ:
Psychopharmacology
出席者(敬称略):
斎藤恵真、松木隆志、森 真佐子、安田 寛、辻河昌登、 竹澤万結、青木喜美、沢田美希子、表西 恵、吾妻 壮、 岸 美佐、斎藤 孝、加藤かおり、エモン睦子、石塚勇人、 継松秀太、橋本 仁、助川美砂(計18名)

会に先立ち、石塚勇人領事館よりご挨拶があり、在留邦人の支援にあたり、職種を超えたさらなるネットワークの構築への協力依頼がなされた。
その後、メンタルヘルスネットワークの森真佐子副代表の司会進行により、ネットワーク代表で児童精神科医の斎藤恵真先生、精神科医の松木隆志先生、総領事館の医務官の継松秀太先生の順に講演がなされた。

斎藤恵真先生(The Zucker Hillside Hospital)からは、医師は医師の権限で薬剤の処方を行っていることと、子どもの臨床で処方される抗うつ薬であるSSRIやSNRIについての説明がなされた。その中で、SSRIは副作用が比較的少ないため最初に投与し、それが効かない場合にはSNRIが投与されるとのことで、それぞれについての代表的な薬剤の説明がなされた。特にSSRIの中では、効果のデータとして高いエビデンスが出ているのはProzacであるとのことであった。さらに、抗うつ病薬に続いて刺激薬と抗精神病薬についての解説がなされ、それぞれにおける主な適応疾患、副作用についての説明がなされた。最後に、子どもが日本に帰国する際、日本では投与が許可されている薬が米国よりも限られているため、そのことへの配慮が必要であることが強調された。

松木隆志先生(Icahn School of Medicine at Mount Sinai, Mount Sinai Beth Israel Hospital)からは、同じ薬剤でも効き方は人それぞれであること、杖のように回復を支えるものであること、回復のためには多くの場合、薬だけでは十分ではなくサイコセラピーも併せて行っていくことが望ましいことの説明がなされた。さらに、日本で過剰に安易に処方される傾向のあるベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬の危険性についての解説がなされた。また米国では、ベンゾジアゼピン依存症、乱用が社会問題化しており規制が厳しくなっており、多くの州では最大1ヶ月分までの処方しか認められていないだけでなく、処方歴が州のデーターベースに登録され過剰処方を防ぐ対策が取られているとのことであった。

継松秀太先生(日本国総領事館)からは、1985年以降に日本で話題となった主な薬剤に関する説明がなされた。さらに、当時の大学病院以外の精神病院における入院患者のほとんどは統合失調症患者であり、入院治療では少ない職員数での病棟運営であるがゆえに、患者の鎮静目的で薬剤が過剰に処方されていたとのことであった。

三名の先生方のご講演後、患者が薬剤を服用することの意味(薬剤に支配されるのか、主体的に活用するのか)、患者と医師との間における治療関係の不平等性、本当にinformed consentは存在するのだろうか、といったことについて、種々議論がなされた。