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子の親権問題について

2009年6月25日

近年、国際結婚が増えていますが、結婚生活で困難に直面した国籍が異なる父母の一方が子どもを連れて母国に帰り、問題になるケースが発生しています。この問題について、留意していただきたい点をまとめました。

Q1.どうして親が子どもを連れて日本に帰ることがいけないのですか?

A.父母のいずれもが親権(監護権)を有する場合に、一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去る行為は、米国の国内法では、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています(注)

例えば、米国に住んでいる日本人が、ご自身の夫(又は妻)の同意を得ないで子どもを日本に一方的に連れて帰ると、たとえ実の親であっても米国の刑法に違反することとなり、米国に再渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合がありますし、実際に、逮捕されるケースが発生しています。

国際結婚して生まれた子どもを日本に連れて帰る際には、こうした米国の事情に十分注意する必要があります。

(注)米国連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204では、16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定している。州法により別途規定がある場合もある。

Q2.離婚した場合、日本と米国とでは、子どもの親権に関してどのような違いがありますか?

A.夫婦関係がうまくいっていれば問題は生じませんが、ひとたび離婚ということになると、子の親権に関する日米の制度には次のような違いがあり、問題となることがあります。

(1)単独親権と共同親権
夫婦が離婚した場合、日本では基本的に、いずれか一方の親が「単独」で親権者となります。 しかしながら、米国では、別居・離婚後も両方の親が「共同」で親権を行うことが基本とされており、片方の親に100%の親権が認められることは稀なケースといえます。そのため、一方の親が地理的に離れた日本へ子どもを連れて帰ろうとすると、もう一方の親による親権の行使(子との面会等)が一部制約されることとなることから、結果的に、子どもを連れて日本に帰ることが許可されない事態が生じることもあります。

(2)協議離婚と裁判離婚
日本では、夫婦の協議により離婚する場合は、裁判を経ることなく届出によって離婚が成立します。その場合、子の親権者をいずれの親と定めたかを離婚届に記載すれば足ります。基本的に単独親権ですから、親権を得た一方の親が子を連れて実家に帰ることが法的に問題となることはないようです。一方、米国では多くの場合、夫婦が離婚に同意している場合でも裁判を行い、子の親権に関する詳細な事項が離婚判決の中で定められます。そして、それぞれの親による子との面会の条件や、子を外国に連れ出すことへの制約等が判決文に盛り込まれることが一般的です。その判決に違反して子どもを日本に連れて帰れば、明らかに違法となります。

国際結婚の場合、夫婦の国籍は異なり、子は重国籍となることがほとんどです。そのため、どちらの国の法律によって問題を解決すべきかを当事者の国籍により決めることはできません。 そういった場合、夫婦や親子関係の問題は、当事者の生活の本拠地(常居所)である国の法律により決着されることが通常です。そのため、問題の解決を話し合っている途中で生活の本拠地を外国へ移すということは法的に重要な意味を持ち、場合よっては、離婚手続が始まった時から子どもを連れて日本に帰ることを制約されることもあるのです。

国際結婚をして米国で生活する方には、将来、思いもよらず米国の法律に違反してしまうことのないよう、こういった問題の可能性をあらかじめ知っておいていただきたいのです。

Q3.一方の親が子どもの旅券申請に反対している場合、他方の親の署名だけで子どもの旅券を取得できますか?

A.未成年の子どもに係る日本国旅券の発給申請については、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の「法定代理人署名」欄への署名により手続を行っています。

ただし、旅券申請に際し、もう一方の親から子どもの旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ在外公館に対しなされているときは、在外公館は当該申請が両親の合意による旅券申請であることを確認しています。この場合、在外公館では、通常、子どもの旅券申請について不同意の意思表示を行った側の親が作成(自署)した「旅券申請同意書」(書式自由)の提出をお願いしています。

Q4.最近よく耳にする「ハーグ条約」(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)とは、どのような条約ですか?

A.国境を越えた不法な子の連れ去りを防ぐことなどを目的として、1980年、国際的な子の奪取の民事面に関する条約が採択されました(平成20年9月現在、締約国は81ヶ国)。日本は、締結の可能性について検討を始めたところです。

この条約の締約国は、不法に子を連れ去られた監護権者からの申立てを受けて、条約上の例外事由がない限り、子が元々居住していた国に迅速に返還されるように努めるなどの義務を負います。子の返還後は、親権を巡る父母間の争い等は、子が元々居住していた国の裁判所において決着することになります。

以上のように、この条約は、不法に連れ去られた子の返還について定めるものですから、子の居住していた国の法律、手続に従って日本に連れてきた子が、その国に送還されることはありません。

 

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