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平成23年春の叙勲について (土肥信一氏)

2011年6月29日

 日本国政府は、6月18日に平成23年春の叙勲受章者を発表し、ニューヨークに在住する日本人では、米国における日本美術・日本文化の普及に大きく貢献した元メトロポリタン美術館学芸部保存修復課学芸員(修復師)の土肥信一氏に旭日双光章が授与される運びとなりました。土肥氏の功績概要は以下をご覧ください。

勲章の伝達式は9月に当地ニューヨークで行います。

 平成23年春 叙勲 功績概要
土肥 信一 氏(Mr. Shinichi Doi)
旭日双光章(The Order of the Rising Sun, Gold and Silver Rays)

1 主要経歴

昭和30年
金沢美術工芸大学美術学部洋画科卒業
昭和43年−平成20年
メトロポリタン美術館学芸部美術保存修復課学芸員
昭和45年−現在
バーク財団コレクション立体美術品専属保存修復員
昭和48年−現在
東京新聞・中日新聞文化事業部海外企画展特別委員
昭和50年−現在
ロックフェラー財団コレクション専属美術保存修復員
昭和52年−平成 3年
ホィットニーアメリカン・アート美術館専属美術保存修復員
昭和53年−現在
金沢美術工芸大学工芸研究所客員研究員
平成 元年−現在 
ニューヨーク富山県人会会長
平成 2年−平成16年
国際文化協会海外企画展特別委員
平成15年−現在
石川県金沢卯辰山工芸工房客員講師

1 功績概要

土肥氏は、昭和43年からメトロポリタン美術館に勤務。修復師として、エジプト、ギリシャ・ローマ、イスラム美術やヨーロッパ中世から現代までの彫刻・装飾美術品に日本美術を含むアジア美術など、メトロポリタン美術館が有する16の部門から頼られる存在であった。例えば、ギリシャ・ローマ美術部門を代表する彫像の「傷ついた戦士」や「傷ついたアマゾン」、14世紀の中国の大壁画である「釈迦仏会」等、同美術館を代表する数多くの美術品の修復保存活動に取り組んできた。中でも、昭和59年のニューヨーク・タイムズ紙は、イスラムの皿の修復完成について同氏を賞賛する記事を掲載、また中国千年展でも大きく取り上げた。その修復の技術、そして熱意は、同氏に対する「美術の医師」、「美術界の外交官」との評になっている。さらに、平成13年の米国同時多発テロ事件で殉職した消防士のディスパッチボード(出勤黒板表)をモニュメントとして保存するに当たっては、同氏がその修復作業を行ったことも特筆に値する。

修復師としての活動だけでなく、同美術館の前館長であるフィリップ・デ・モンテベロ氏(平成19年秋・外国人叙勲(旭日重光章)受章)などと協力し、同美術館における日本美術、日本文化の存在感を高めた。特に、昭和62年に同美術館がサックラー・アジア美術ギャラリー(日本美術ギャラリー)をオープンする際には、これら日本美術品の陳列・修復にも力を注ぎ、日本美術の整備・充実、陳列・修復に大きな役割を果たした。現在メトロポリタン美術館所蔵品を日本の美術館等に貸与する形での展示会が数多く企画されているが、日米当事者間の橋渡しとして同氏の存在は非常に大きいものであった。同氏が日米関係者間の斡旋に尽力したこともあり、わが国でもメトロポリタン美術館の優れた芸術作品を容易に鑑賞することができるようになった。また、メトロポリタン美術館以外でも日本の現代工芸作家の作品紹介や展覧会の開催などにも尽力している。

さらに、同氏はニューヨーク富山県人会を立ち上げ、長年にわたり会長を務めるなど、米国における日本人・日系人コミュニティを支えている。

 

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