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黒澤映画が新たな英文字幕でリバイバル

2003年1月

〜英文字幕家リンダ・ホーグランドさん〜

 黒澤映画が新しい英文字幕と共に全米各地で上映され、改めて高い評価を得ています。"クロサワ人気"復活の陰の立て役者は、英文字幕家リンダ・ホーグランドさん。2002年、ホーグランドさんは『7人の侍』『生きる』『悪いやつ程よく眠る』『野良犬』『酔いどれ天使』など7本の作品について、現代のハリウッド映画的感覚も取り入れながら、英文の字幕を作成し直し、見事に"クロサワ映画"を復活させました。

 ホーグランドさんは、映画の登場人物の怒りや強情、ひと癖ありげな表現を、一場面につき英字80字以内という制限の中で、英文に表現します。「言葉は人物の性格を形づくるもの。登場人物はそれぞれの言葉の癖や特徴を持っています。その人物の年齢や階層、性別、態度や行動の特色を、言葉に反映させていくのが字幕家の仕事」と言います。例えば『7人の侍』では浪人の侍達の言葉と農民達の言葉に、それぞれの社会階級の違いを反映させなければなりません。侍の口調は簡潔で、活気があり、武士の高潔さを保つため、自らの感情をあからさまに表現するものではありません。それに対して農民達の言葉は俗臭のただよう言葉に翻訳しました。

 完璧なバイリンガルであっても、日本語と英語という全く共通点のない言語を翻訳し、映画の作られた社会的背景やそれぞれの人物の特徴も踏まえ、限られた字数の中で字幕を作っていくのは、並大抵の作業ではないはずです。「アメリカ人は日本語の表現を曖昧だと感じ、日本人は英語の表現を率直すぎると感じるのです。日本語と英語ほど、異なる言語はありません。」と語るホーグランドさん。黒澤映画だけでなく、宮崎駿監督の「もののけ姫」「千と千尋」や深作欣次監督の「バトル・ロワイヤル」など、数多くの日本映画の英文字幕を手がけています。これらの映画に対する海外での高い評価には、ホーグランドさんの英文字幕が大きく貢献していると言っても過言ではないでしょう。

 実は彼女にとって、日本語の会話を英語にしていく字幕作りの作業は、「本能的なもの」なのだそうです。アメリカの宣教師の娘として京都に生まれ、山口と愛媛で地元の小中学校に通い、高校を卒業するまで神戸に住みました。ご両親は彼女たち姉妹をバイリンガルに育てるため、毎朝5時から日本語と英語の勉強をさせました。学校では日本語だけで過ごしますが、家に帰ってきて夕食の時間には、その日に学校であったことを両親に英語で話さなければなりません。日本語で経験し、英語でアウトプットする――彼女の子供時代の生活そのものが、既に字幕作りだったのです。ホーグランドさんは今、字幕を作るときも「まず日本語で登場人物の感情を体験し、それを英語で表現し直していく」そうです。

 バイリンガルとしてのアイデンティティを確立しているホーグランドさんは、アメリカ社会に対しても常に厳しい目を向けています。9/11のテロ事件が起こる1年ほど前から、アメリカに対する危険信号を感じていたと言います。「私にはアメリカの道路を走るSUV車が戦車に見えた。このまま行けばアメリカは戦争になると思いました。」

 ホーグランドさんの字幕による黒澤映画は今後、全米各地で上映されます。先日ニューヨークで公開された『生きる』もチケットは完売、満員の聴衆から絶賛を浴びました。生まれ変わった黒澤映画を、是非、アメリカの幅広い映画ファンに見ていただきたいと思います。

『7人の侍』

  • MONTREAL, QUEBEC at the Cinema du Parc January 31st - 4 days only!
  • WILLIAMSBURG, VA at the Kimball theater starts February 2nd
  • NASHVILLE, TN at the Belcourt opens February 28th
  • ST LOUIS, MO at the Tivoli starts February 14th
  • INDIANAPOLIS, IN at the Key Cinema starts March 7th
  • MINNEAPOLIS, MN at the Uptown on March 21
  • MONTPEILER, VT at the Savoy Theater March 27th - March 30th
  • LOCUST GROVE, AR at the Ozark Foothills Filmfest on April 4th - 1 day only!
  • MILWAUKEE, WI at the Oriental starts May 2nd

『生きる』

  • VANCOUVER, BC (CANADA) at the Pacific Cinemateque January 31st - February 3rd
  • WASHINGTON DC at the American Film Institute February 7th - February 16th
  • DETROIT, MI at the Detroit Film Theater at DIA February 28th - March 2nd
  • CLEVELAND, OH at the Cleveland Cinematheque March 6th - March 9th
  • SEATTLE, WA at the Northwest Film Forum March 14th - March 20th
  • BERKLEY, CA at the Pacific Film Archive opens April 11th
  • KANSAS CITY, MO at the Tivoli at Manor Square June 12th - June 16th

『黒澤・三船シリーズ』

  • TORONTO, Ontario (Canada) at Cinemateque Ontario January 24th - 31st
  • PHILADELPHIA, PA at the Prince from January 25th - February 25th
  • MINNEAPOLIS, MN at the Oak St. February 28th - March 25th
  • ITHACA, NY at the Cornell Cinema March 1st - May 17th
  • HOUSTON, TX at the Museum of Fine Arts March 14th - April 20th
  • MILWAUKEE, WI at th Union Theater April 22nd - May 1st
  • ATLANTA, GA at the High Museum June 7th - July 26th
 
(c) Consulate-General of Japan in New York
299 Park Avenue 18th Floor, New York, NY 10171
Tel: (212)371-8222
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