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2007年11月20日 |
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- 日時:11月13日18時〜20時
- 場所:当館18階査証待合室
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- 講師略歴:長谷川真人氏(理学療法士)
- 国際医療福祉大学理学療法学科卒。2001年渡米、ニューヨーク大学教育学部保健学科セラピューティックレクリエーション課程卒、修士号取得。同年よりJewish Home and Hospitalにレクレーションテラピストとして勤務。ニューヨーク大学附属病院理学療法部門を経て2007年帰国。現在は、ベネッセコーポレーション有料老人ホームアリア松原に勤務。
- 講演テーマ:「日本の高齢者介護事情について」
- 講演概要:
司会進行:仲本医務官
(1) 日本の高齢者介護サービスの現状
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2007年の高齢化率は20%(5人に一人)、2015年では25%、2040年には33%(3人に1人)になると言われている。地域によっては、さらに高齢化率の高いところもあり、日本は世界でもトップクラスの高齢社会である。家族(特に嫁)の介護による精神的負担の増加、介護費用の負担などが問題になっているという背景から、利用しやすく、公平で、効率的な社会的支援サービスの必要性に応じるため、2000年度に公的介護保険が導入された。
その仕組みは、全費用の50%を40歳以上が支払う介護保険料。12.5%を市町村、12.5%を都道府県、25%を国が負担するというものである。実際の受益者は40歳から64歳の場合には加齢に伴う病気を有して介護が必要な者、65歳以上の場合には介護が必要な者が利用できるシステムとなっている。受けるサービス内容は自分で選択する。
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介護保険を利用するには、?@利用者が市町村に届け出を出す。?A市町村から派遣されたケアマネージャーが申請者の自宅で訪問審査を行う。?B医師の意見書を得る。?Cコンピューターで判定がされる。?D最終的には介護認定審査会により要介護度が認定され利用できる。
要介護度レベルは7段階に分かれている。要支援1〜2、要介護1〜5まであり、日常生活動作、薬の内服、電話等の自立が出来ているか等で決まる。要介護度のレベルで利用できる金額が決まる。介護保険費用は自治体で異なるが、全国平均は65歳以上で4、090円となっている。利用するサービスの1割自己負担が原則で、各サービスの費用は点数化され全国一律となっている。
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利用限度額は2007年現在、要支援1の場合49,700円、要介護5は月358,300円で、自己負担はその1割となっている。超えた額については全額自己負担となってしまうので限度額内で収めるプランの作成が必要となる。利用できるサービスの内容は、1.居宅サービス(訪問ケアなど)、2.施設サービス(特養、老人保健施設など)、3.地域密着型サービス(通所、夜間訪問ケアなど)、4.介護予防サービス(通所、訪問)、5.地域密着型予防サービス(認知症対応など)、6地域支援事業(介護予防活動など)がある。施設サービスとしては、指定介護老人施設、介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設などがある。有料老人ホームなどでも介護保険が適応となっている。
- 実際にかかる費用については、個別に異なるが、例えば73歳の女性が脳卒中を発症、回復後、日常生活での介護が必要になり要介護度が3と認定された場合だと以下のようになる。訪問入浴介護週2回で1,000円、訪問身体介護(シャワー等)週4回で3,696円、訪問生活援助(昼、晩ご飯の準備)週6回で4,992円、訪問リハビリ週2回で4,000円、訪問看護週1回で920円、通所介護サービス(4〜6時間/週1回)で2,672円となり、合計で月30,290円(26,280円+介護保険料4,010円)の負担となる。
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介護保険を利用する場合には、1.介護度の認定、2.支給額、3.利用すべき・したいサービス、4.実際に実施されているサービス(自治体で異なる)を総合的に判断する必要があり、自分一人ではケアプラン作成が困難なため、各自治体のケアマネージャーと相談することとなる。
- 2006年度に制度の改訂があり予防重視が打ち出され、また相談のための地域包括支援センターが出来た。介護要望活動対象者選定のためのチェックリストも出来た。自立度、運動機能、栄養状態、口腔機能、閉じこもり、認知症、うつ症状のサインを目安にしてリストは作成されている。それぞれの機能について介護予防活動が受けられる。運動機能改善としてはスクワットなど、栄養状態改善としては料理教室などの他、舌と口のストレッチ、知的活動、骨盤底筋群のエクササイズによる失禁予防活動なども行われている。
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日本の介護施設としては公共型と民間型がある。長谷川氏が勤務しているのは民間型の介護付き有料老人ホームのアリア松原である。当施設の(は)入居金は2500万円〜、月額利用料は26.3万円〜で、24時間介護体制の整った全室個室の施設である。公共の施設としてはユーアイビラ(東京都福生市)などがあるが要介護3の場合1日3、843円の負担となっている。自宅で生活する重要な支援として居宅ケアがある。訪問介護、訪問リハビリを行う。1回のサービスで200円〜1、200円、ターミナルケアも実施している。個別のリハビリは1回30分で500円。住宅改修費用は年間20万円まで支給される。
- 日本の介護保険の利用を考える場合の注意点としては以下がある。1.各自治体の特色をホームページなどで把握すること。2.要介護度と利用するサービス費用の予想をすること。3.申請してから利用まで1ヶ月かかるので、帰国のタイミングが重要である。4.ケアマネージャー、地域包括支援センターと連絡をとっておくこと。5.今後の制度の見通しをつかむこと、などである。
(2) 高齢者支援のあり方と今後の展望
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2010年には高齢者は2,914万人と予想されている。介護保険利用者は毎年増加しているが、まだ360万人程度であり、高齢者の13.5%にしかすぎない。残りの高齢者は元気と言える。介護保険制度が昨年改定され、予防重視、地域に密着したサービスの充実が挙げられた。これからは高齢者が主役の時代とも言える。
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介護予防活動の現状
最近の変更点として、地域包括支援センターが主体となった事、定期検診・スクリーニングによる対象者の選定を行うようになった事、異なる段階の高齢者に即した支援を行うようになった事がある。今後の各自治体、厚生労働省の同行に注目が集まっている。
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地域包括支援センターは人口2〜3万人に1ヶ所を目安に設置される予定で、「よろず相談所」的な役割を行い、専門職が配置される事になっている。特定高齢者把握事業として介護予防プログラム参加を判断しているが、その目安としては、運動機能、栄養状態、口腔機能などが指標になっている。実際は基本チェックリストが利用されている。
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運動機能向上としては、筋力トレーニングが重用視されている。マシントレーニングの他、自主エクササイズ形式もあり、指導者ボランティアの育成も行っている。栄養改善としては、管理栄養士による指導、調理実習などを行っている。口腔機能改善としては、嚥下の練習、口腔ケア、姿勢の指導などを行っている。認知症予防としては、ウォーキング、パソコン、旅行、料理教室などが行われている。閉じこもりの主要因として失禁があり予防が重要である。治療が可能な場合も多く、骨盤底筋群のエクササイズ、オムツ、パッドの有効利用、行動的アプローチも有効である。うつ予防としては、検診、チェックリストによるスクリーニングが重要である。早期発見、専門家への紹介が重要である。閉じこもり予防も重要である。
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自治体の成功例としては群馬県藤岡市の鬼石モデルがある。月1〜2回の合同筋力トレーニングを群馬大学の講師が行い、地域の指導者、介護予防のサポーターを育成している。大学と地域との連携が専門的な指導と支援を実現している例である。
東京都の例としては、世田谷区の「男の台所」がある。引きこもりがちの男性の拠点として料理教室を立ち上げた。料理が上手になった参加者は出前シェフとして地域貢献も行っている。
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今後のあり方
各活動の適性な評価が必要で、制度の高いスクリーニング方法の確立が必要である。自治体間での情報交換も重要。将来に向けた介護保険費用の確保が課題となっている。
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高齢者支援のあり方
予防活動、スクリーニング活動に重点をおくべきである。高齢者の自主的な参加を促進し、高齢者のボランティアを育成し就労支援を行う事が必要。地域を主体とした支援方法を確立する。単なる寿命でなく健康寿命を延長する。終末期のガイドラインの明確化も必要である。
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米国での在留邦人、日系人高齢社会のあり方
日本のシステムの優れている部分についての(で)情報を伝達する必要がある。各自治体との連携も必要である。日米間の情報交換が必要で、シニアウィークなども有意義である。積極的なActive Aging活動の促進が重要。日本語での情報提供、サービスの確保を行い、日系ネットワーク(NPO、大学など)を有効活用する事が必要である。
- 講演会終了後実施した参加者からのアンケート結果
- アンケート回答数:38人
- 結果
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- 日時の選択:
- 良かったと答えた方が多かった。(35人)
- 会場の選択:
- 良かったと答えた方が全てであった。
- 申し込み方法:
- 良かったと答えた方が多かった。(35人)
- 講演会を知った方法:
- コミュニティ誌が多かった。(16人)
- 会の進行:
- 良かったと答えた方が全てであった。
- 講演会の内容:
- 大変役に立ったと答えた方が多かった。
- その他知りたいこと、聞きたいこと:
- 地方の介護事情、ランキングが知りたい。生活保護者の場合の事情。認知症高齢者への対応方法。健康維持の方法。NY地区という自治体の実現性。ケアマネージャーになる方法。日米の老人ホームの違い。日米の年金制度。日本の健康保険料。米国メディケアと日本の比較。二重国籍について。 今後も講演会を総領事館で行ってほしい。 総領事館ホームページにこういう情報を掲載してほしい。
たいへん参考になった。
- 滞在理由:
- 長期滞在又は永住者が多かった。(34人)
- 性別:
- 男性7人、女性31人
- 年代:
- 50代8人、60代11人、70代11人、他8人
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