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シニアウィークにおける日米医療保険についての講習会(概要)

2007年10月26日

  1. 日時:9月19日(水)10時〜12時

  2. テーマ:日米医療保険;実務から見た医療保険制度の違い

  3. 講師:東京海上記念診療所 北川明人(Director of Operations)

  4. 概要:
    (1) 日米医療保険の違い:給付の視点から 日本は国民皆保険制度であるが、米国は私的保険制度が主体。人口の6分の1から7分の1といわれる4700万人から5000万人は無保険者。保険証書(ID)は、日本の場合全国で使用可能であるが、米国の場合加入保険プランによって様々である。医療費は、日本の場合一律であるが、米国の場合、地域、専門科で異なる。窓口負担(Copay)は、日本の場合7割等一律であるが、米国の場合プランにより様々。専門医受診は、日本の場合自由にかかることができ、米国の場合保険会社の承諾が必要なものが多く存在する。精密検査は、日本の場合医師の裁量権により即座に決められるが、米国の場合保険会社の承諾が必要で、OKが出るまで72時間程度かかっているのが現状。 予防医療については、日本は認められていないが、米国では認められているプランが多い。

    (2) 保険支払い方式概略(以下、米国) ICD-9/CPT codeといった診断コード、治療が番号化されている。FFP(Fee For Service)と呼ばれる出来高払い、積み上げ式。Global Feeと呼ばれるセット料金、DRG/PPSと呼ばれる病名で全て決まるシステムなどがある。

    (3) 給付の算定方式 日本とは異なり、基本的に保険者が医療機関と契約という形で自由に設定できるシステム。一応の算定方式はある。 Managed Care Fee For Service(出来高払い制度)とは、保険ネットワーク内の契約医療機関の場合にディスカウントするシステム。例えば、通常$100の受診料を$60に減額し、残りの$40は患者に請求しない。 ネットワーク外の医療機関の場合、年間の免責額が終了したあと契約金額の70%程度を保険会社が負担。例えば、$100の受診料の場合は保険者は契約額の$60×70%の$42を負担。患者の負担は残りの$58となる。日本の場合は、Single Pay方式と呼ばれ、どこで受診しても定率払いである。

    (4) 米国の民間健康保険 自由度が高いものから順にIndemnity(Traditional Plan)、PPO(Preferred Provider Organization)、POS etc、HMO(Health Maintenance Organization)となるが、これは同時に保険料(Premium)については高額な物の順となる。10年前にはIndemnityの占める割合が45%程度であったが、最近はIndemnityは10%、PPOが40%、HMOが20%と廉価な管理型医療保険が増加している。
    HMO:
    ネットワーク内のPCP(Primary Care Physician:かかりつけ医)のみに受診可能。ネットワーク専門医への受診にはPCPからの紹介が必要。患者は窓口でCo-payのみ支払えば良い。Co-payは以前は$5程度、最近は月ごとの保険料が高騰し、企業の負担を軽減するために、患者窓口負担が$40といったところもある。
    HMO改良型:
    ネットワーク内のかかりつけ医、専門医に自由に受診可能。ネットワーク内であればCo-payのみ。ネットワーク外の医師を受診する場合は、年間免責額(例$1000)までは自己負担、超える額については30%等が支払われる。
    PPO:
    ネットワーク内であればどの医師もCo-payで受診可能だが年間の免責額を設定しているものも多い。ネットワーク外の医師については、免責額までは自己負担。超える額については一定の割合(30%等)を自己負担する。
    Indeminity:
    ネットワークに関係なくどの医師にも受診可能。低率負担割合(例20%患者負担等)や免責限度額あり。例えば年間1000ドルまで等。 保険料(Premium)は、4人家族で、Indemnityで月$2500、PPOで$1500〜$2000、HMOで$1000程度で企業の保険事故率に沿って翌年度は10%から15%の保険の上昇が予想される。企業は、保険料を半額等一定の割合で負担している。
    HSA(Health Saving Account):
    ブッシュ政権になって導入した方式。免責額が高額(例$1万ドル等)。医療費を抑制し、消費者自身に健康の責任を負わせるもの。免責を超える医療費については100%支給される。大家族等や健康に問題が多い人で毎年多額の支払いを行っている人については有利な場合もある。また使用しなかった場合、翌年に眼鏡等の購入に使用可能といった利点もある。
    一般的な保険適用範囲:
    給付内容は保険会社の査定によるが、一般的診療、分娩費用定額、予防医療(年次健康診断)、処方箋薬、不妊・家族計画(1回限り)、ER、入院、手術、メンタルヘルス、がカバーされる。美容外科などはカバーされない。

    (5) メディケアについて 米国の老年健康保険はMedicareと呼ばれる。65歳以上、あるいは以下でも特定の障害や透析などを行っている場合に支給されるもの。オリジナルのメディケアプランはA(入院支払い)、B(外来受診)で構成されている。2006年から開始されたプランCは、HMOやPPOsと似た有料のプラン。プランDは、有料の薬購入用の保険。通常はC+D、あるいはA+B+Dといった入り方をしている。プランAはSocial Security受領資格者で10年以上納めていれば、無料で支給される。対象にならない場合でも収入に応じた額で買う(最大月$410)ことが可能である。基本的には救急治療用の医療保険であり、長期のナーシングホーム滞在等には支給されない。プランBは年収別で保険料は$93.5〜$161.4となっている。年の免責額は$131。検査費用は支給される。外来診療の負担は定額で20%である。救急車、日帰り手術や輸血の他、骨折ハイリスクの方には2年に1回の骨密度検査、5年に1回の循環器検査、限定的ではあるがカイロプラクティック、予防接種なども支給対象となる。針治療や美容整形、入れ歯、ナーシングホーム滞在費、健康診断はカバーされない。プランCは、商業ベースで行われており、民間のHMOやPPOsに似たシステムになっている。プランA+Bよりも保険料は安い。プランDは、薬剤購入の保険であるが種類は多様である。年間の免責額は$265程度が多い。保険料は月$9.5から$82.1程度で様々。保険対象となる薬剤は決められており、新薬は適応外。ジェネリックはブランド薬よりCo-payが安い。メディケアに関する問い合わせは、1-800-633-4227、www.medicare.gov等で行っている。

    (6)健康保険会社について 給付者権限というのは保険会社の権限である。給付にあたっては、医師の治療ガイドラインと抵触する事もある。医師の検査、治療、処方が、保険会社により拒絶される事も少なくない。ガイドラインに基づかない検査や、高額な検査を頻繁に出す医師には、保険会社との契約更新がし難くなる。Payerたる保険会社とProviderたる医療機関は契約というパワーゲームを行っている状況。顧客をたくさん持っている方が有利であり、 保険会社も医療機関もM&Aによる合併吸収の方向を余儀なくされている。 医療機関は外部評価による機能検査(13,000項目に及ぶクオリティコントロール)を3年に1度受けている。薬剤の購入について、新薬等については保険会社の承認が必要となっている。薬剤提供会社も巨大な第3者処方箋管理会社の方が安価に提供できる状況となっている。保険会社とクレームを請求する会社は別である場合が多い。保険会社とネットワーク名は別であり注意が必要である。保険会社の発行する保険証書(ID)には、保険カード番号、会社の番号、Co-payの金額、プランの種類、処方箋の受付等が記載されている。また裏面に、入院する前に保険会社の許可が必要などと記載されているので注意が必要。自分の加入している保険について、以下を十分に確認しておく必要がある。
    1. Co-payの額
    2. 免責の額
    3. 免責を超えた場合の負担額・割合
    4. 予防医療への支給
    5. ネットワーク外の利用条件
    6. カバーしないサービス内容
    各医療機関は、その保険内容を把握している訳ではない。窓口で保険を受け取るという事と、給付されるという事とは異なる。医師も保険の事は認識しておらず間違いを述べる事もある。一般診療費用はFree for service(出来高払い制)として存在するが、保険が発動した場合には、契約により減額費用にする事を医療機関は了承している。例えば本来の初診料が$150でCo-payが$15の場合、保険会社の契約額が$65であれば、保険会社は$50のみ支払うので、差額の$85は、医療機関の負担となり、患者さんへ請求することは法律で禁じられている。

    (7) PCP(かかりつけ医) PCP(Primary Care Physician.:かかりつけ医)とは、健康管理維持のゲートキーパーであり、健康診断実施者、予防接種担当者、専門医への紹介とフォローアップ担当者、基礎医療情報提供者、治療経過の一元管理者、健康管理のリスクマネージメント担当者である。 良いPCPの選び方:アクセスのしやすさ。十分なインフォームドコンセント。適切な専門医への紹介とフォローアップ。休暇時のカバー医師の存在(保険利用可能か?)。時間外・救急時の対応の良さ。電話相談対応可能か。看護師の質(州政府の免許の有無)。保険利用の明確さ。Board Certifiedされているか(内科医、小児科医、家庭医などの専門医資格)。入院病院との関係は良好か(PCPが入院先でのケアが可能か)。以上の事に留意。

    (8)用語解説
    Co-payment:
    診療事ごとに診療窓口で支払う患者さんの負担金。保険会社の給付の一部に充当する。診療毎に発生する。
    Co-insurance(共同負担割合):
    保険契約で決められている患者さんの負担割合。
    Deductible(免責額):
    保険契約で1年間に決められた給付制限額。免責を超える額については、Co-insuranceにより一定の割合(30%等)を負担する事になる。
    Referral:
    PCPから専門医に紹介される際の紹介状。保険会社の承認が必要なものも多い。また有効期間と始まる時期、回数等に制限がある。(許可日から90日以内の受診、6回までOK等)
    Pre-Authorization:
    MRI,CTなどの精密検査を行う前の保険会社による承認の事。検査によっては施設を指定される事もある。保険会社によっては承認まで24時間から72時間かかる場合がある。入院やERの利用の場合も必要。(緊急時には事後通告でもよい。)
    EOB(Explanation of Benefits):
    治療、検査についての給付についての保険会社の説明書。カバー内容が記載され、患者さんの医療機関に対する支払の有無が記入されている重要な書類。少なくとも2年は保管すること。
    COB(Coordination of Benefits):
    保険会社に提出する被保険者の保険情報(住所、扶養家族の転入・転出、新規加入保険の有無・内容)のアップデート届け。アップデートされるまで給付がストップされ、保険会社から支払いがあるまで医療機関から請求書が送られてきます。 請求書:保険請求はプロバイダー毎(診察、血液検査会社、放射線検査脂質、介護機器など)に発行される。サードパーティー(保険請求会社)が担当している。
    StatementとBill:
    Statementとは現在のバランスを示すもの。Billとは請求書のことで、患者さんの支払い義務を示すもの。

    (9)保険に関するトラブルが発生しないための留意点、確認しておく事
    • Co-paymentの有無、額
    • Referralが必要か? 回数・有効期限の制限は?
    • Pre-authorizationが必要か?(精密検査、ER、入院についての保険会社への連絡)
    • Deductibleの額
    • Co-insuranceの有無、割合
    • 保険会社の審査に間違いがないか?(EOBで確認)
    • 医療機関のCodingに間違いがないか?(診断コード、治療コード)
    • 保険のBenefit Summaryをきちんと理解しておきましょう
    • 既往症に関する制限(Preexisting Condition)を確認しておきましょう
    • 不明な事は、保険会社に事前連絡しましょう
    • COBをタイムリーに連絡しておきましょう

    (10)保険トラブル発生時の心得 パニックに陥らない事(米国ではよくある事です。) EOBの説明を確認。受診後2ヶ月してEOBが来ていなければトラブルと考える。 保険会社へ連絡し、プロバイダー(医療機関)との説明の整合性を確認する。 医師は保険ネットワーク内か確認しましょう。 Co-paymentの支払いを確認しましょう(必ず受診時コピーをもらっておきましょう) Deductible額を確認しましょう Co-insuranceを確認しましょう チェック・クレジット支払い歴は必ず保管しましょう 最終的に確認した後、支払いをしましょう
 
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