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2. テロ対策

当地では、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件以降も、ニュージャージー州及びニューヨーク市チェルシー地区における爆発テロ(2016年)、ニューヨーク市マンハッタン地区における車両突入テロ及び地下鉄通路爆発テロ(2017年)、タイムズ・スクエアにおける警察官襲撃事件(2022年)等のテロ事件が発生しました。
米国において、日本人や日本の権益が直接的なテロの対象となる可能性は概して高くありませんが、近年、世界各地で、一般市民が多く集まるレストラン、ショッピングモール、公共交通機関等のソフトターゲットを標的としたテロが頻発しており、こうしたソフトターゲットを狙ったテロ事件に巻き込まれる危険性は排除されません。
現下の世界情勢に鑑みれば、テロはどこでも起こり得ることを認識し、日頃から常に安全を意識し、慎重に行動するとともに、テロの現場に遭遇した際の行動をイメージするなど、有事に備えた準備を行っておくことが重要です。

(1)テロの種類とその対策

テロの種別に応じて取り得る対策は以下のとおりです。いずれの場合も自分の身の安全を第一に考え、その場の状況に応じて適切かつ十分な安全対策を講じるよう心がけてください。

建物における爆弾テロ
● 見慣れない物や不審物があれば触ることなく、速やかに不審物から遠ざかり、建物の警備担当及び警察等に通報する。
● 避難経路確保のため、ドアや窓は開けたままにして逃げる。私物を残してしまった場合でも、危険なので取りに戻らない。
● 身近で爆発事件が発生した場合は、すぐその場に伏せる。第一の爆発をおとりにして、第二の爆発が起きる可能性があるので、速やかに爆発現場から遠ざかる。

自動車爆弾テロ
● 夜間、路上や警備員のいない駐車場に長時間車を放置することは避ける。
● 事務所や自宅のガレージ周辺に不審者が近づかないよう工夫する。
● 車に乗り込む際には、タイヤ周辺、車体下部、車内を点検し、異常がないか確認する。
● 新たなテロの手口として自動車に爆発物を積んで事務所等に突入する方法も見られるため、テロ攻撃が発生する危険性のある地域においては、コンクリート製の車止めを準備する。

小包・手紙爆弾テロ
● 受け取った時点で、差出人や梱包等に不審な点がないか確認する(差出人への問い合わせも一案)。
● 不審な小包・手紙は振ったリ、投げたりせず、慎重に取扱う。
● 不用意に開封したり、中のにおいを嗅いだりしない(爆発物、放射性物質や生物・化学物質が梱包されている可能性に注意)。
● 直ぐに人の出入りのない場所に保管し、警察に連絡する。
● 表示に注意する。以下に当てはまる場合は不審物の疑いが高い。
①普段予想しない、馴染みのない場所から送付されている。
②郵便局消印の市・州と差出人の住所が合致しない。
③差出人の住所が無い、または確認できない。
④宛先が手書きである、または幼稚にタイプされている。
⑤宛先の綴りが間違っている。
⑥宛先が誰宛かはっきりしない。
⑦既に職場を去り、相当の期間が経過している人物に宛てられており不自然。
⑧"Personal"、"Confidential"、 "Do not X-ray"等の記載表示がある。
⑨包みに脅迫・威嚇文言の記載がある。
● 形状に注意する。以下に当てはまる場合は不審物の疑いが高い。
①包みからワイヤーやアルミホイルがはみ出ていたり、異臭や付着物がある。
②包みの重量に違和感や重さに偏りがある。また、形状が奇妙。
③必要以上に切手が貼られている。紐・テープで過度に梱包されている。

銃乱射テロ
銃 乱射テロが発生した場合は、以下の点に注意し、自身の安全を確保しながらその場から離れましょう。
●逃走・脱出ルートがある場合は、持ち物はそのままにして速やかにその場から逃げる。
● 自身の近くでテロが発生し、その場からすぐに逃げられない場合は、地面に伏せ、隙を見て犯人から隠れられる遮蔽物へ移動する。その際、スマートフォン等を消音設定にするなど静穏を維持したまま隠れる。
●犯人の動きを確認しながら、少しずつ犯人から遠い遮蔽物へ移動し、距離を取る。
● 安全な距離まで離れる又は隠れている場所の安全が確保され次第、助けを呼ぶ。
● 遮蔽物(しゃへいぶつ)がないなど隠れる場所がなく、近くに犯人がいてその場から急いで逃げる必要がある場合は、直線的に走るのではなく、ジグザグに走って逃げる(犯人は銃の照準が合わせづらくなり、被弾しづらくなる)。

(2)会社・事務所における留意点

当地に新たに事務所を開設する場合は、次のような点に注意してください。住居を選定する場合にも有効です。また、事務所内外の警備を強化することは言うまでもありません。

留 意 点
● テロの対象となるおそれのある施設(注)の付近には事務所等を設置しない。
● 警備員が配置され、不特定多数の人物が出入りできない構造のビルを選定する。
● 来訪者を装った不審者に、事務所や車に爆弾を設置されないようにするため、以下の点に気をつける。
①社員用と来訪者用の入り口や駐車場はなるべく区別する。
②爆弾が仕掛けられた車に事務所を爆破されないよう、来訪者の駐車場は、事務所から離れた場所に設置する。
③駐車場入口には監視員を配置し、不審人物の出入りを規制する。
④社員・来訪者にIDカードの提示を求める。また、事務所内に爆弾を仕掛けられないよう、防犯カメラを設置し、監視員の巡回を強化する。 ⑤建物周辺の整理整頓に努め、爆弾物の発見を容易にできるようにする。

(注)テロの対象となるおそれのある施設等
軍関連施設、政府関連施設、宗教関連施設、その他警備や監視が手薄で一般市民が多く集まるソフトターゲット(観光施設周辺、イベント会場、有名なレストランやホテル、人気のあるショッピングモール、空港、主要駅や公共交通機関など)

不審物早期発見のための工夫
● 来訪者の手荷物検査を実施する(可能な限り金属探知機も使用)。
● 社内外の死角をなくし、監視が行き届かない所は直接見回りをする。
● 整理整頓をすることによって、不審物(放置された荷物、手紙や小包等)の早期発見を心掛ける。社員全員が不審物に対して普段から敏感になる。

事前の訓練
● 爆破予告或いは爆発物を発見した場合の行動計画等を定め、社員全員に共有する。
● 爆破予告電話を受ける可能性のあるすべての社員(特に電話交換手)に対し、聴取項目を記載したメモを予め配布しておく。また、電話対応の演習を行う。
● 複数の避難経路と避難先を決めて、速やかに避難できるよう繰り返し訓練を行う。

犯行予告への対応
● 犯行予告には真の脅迫だけでなく、単なるイタズラや嫌がらせの場合もあるが、どのような内容であっても信憑性のあるものとして捉える。
● 電話による犯行予告の場合は、聴取項目を決めておき、できる限り多くの情報を入手するよう努める。また、電話機に録音機能をつけるなど、内容を正確に把握できるよう対策を講じる。
● 詳細を記録した後、警備責任者及び警察等に遅滞なく連絡する。

(3)その他留意点

古い建物の多いニューヨークでは、アスベストによる二次被害が心配されます。水蒸気や瓦磯に接触した可能性のある人は、シャワーを浴び、着ていた服をプラスティック袋に入れ、クリーニングするか破棄してください。

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