海外安全対策連絡協議会(第16回)
2004年6月21日
6月21日、日系関係18団体の皆様が出席し、第16回目の海外安全対策連絡協議会(海安協)が開催され、邦人の安全対策等について協議が行われました。
今回の協議会では冒頭総領事館佐藤首席領事より、(1)「海外安全対策連絡議会開催の目的」等について説明があり、(2)米国国土安全保障省の防災対策を担当する連邦緊急事態管理局(FEMA)よりピッチアーノ地域行動局長に出席頂き、緊急事態対策の説明がおこなわれた他、(3)在留邦人が直面する問題について意見交換が行われましたので、概要について以下の通り紹介致します。
安全対策協議会とは
当地の治安やテロ情勢及び邦人の安全対策等について情報交換を行うため設置され、当地日系団体、日系メディア、旅行業界など関係者が参加して、年4回(四半期毎)会合が開催されています。
海外安全対策連絡協議会開催の目的
佐藤博史首席領事より、海外安全対策連絡協議会は海外における日本人の安全の確保について官民双方が情報を交換し、共に考える場であることを説明しました。
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連邦緊急事態管理局(FEMA)による緊急事態対策の説明
ジョー・ピッチアーノ地域行動局長より緊急事態に備え何が重要であるか説明頂き、意見交換を行いました。
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邦人が直面する問題について(意見交換)
協議会参加者で運転免許証の問題や治安問題をはじめとする邦人が直面する問題について意見交換が行われました。
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(佐藤博史在ニューヨーク総領事館首席領事)
(1)本日の海外安全対策連絡協議会を開催するに当たり、本協議会の目的について改めてご説明申し上げたい。この協議会は海外における日本人の安全の確保について、民間の皆様と在外公館がそれぞれ持っている情報を交換しつつ、共にどのようにしたら日本人の安全を守れるかということを考える場である。協議会を通じ、我々自身の安全意識を高め、日本人の安全の確保を図っていくことが目的である。
(2)政府の大変重要な使命の一つは海外における邦人の生命・安全を守ることである。しかしながら、これは在外公館だけが一生懸命やってもできるものではない。在留邦人皆様の協力と理解があって初めて効果的な措置が可能となる。
(3)私は東京で邦人保護の業務に携わっていたが、イラク戦争中、当時人間の盾となる方々がどんどんイラクに入って行っており、我々が非常に危険である旨伝えても、「危なくない」と云ってイラクへ渡航する人たちがいた。これらの方々は政治的な信条で現地に行かれておられるが、命を守ることの重要性と渡航する地域が如何に危険であるかを十分理解することが必要で、その上で最終的には本人の責任で赴くことになる。この点で少なくとも情報の入手が十分にできず、覚悟の無いまま渡航し死亡してしまうケースが発生することのないようにしなければならない。そのためには政府側、在外公館は日頃から邦人の方々と十分な意見交換をやっておかなければならないと思う。
今協議会も我々館側が一方的にお話しするのではなく、出席頂いたメンバー皆様から意見や情報を頂くことが重要であると考えるので、皆様より活発なご意見や情報を頂きたい。
(4)本日は、2つの議題を用意した。1点目は9.11の同時多発テロ事件を始めとする危機管理の問題であり、緊急事態が発生した際の我々の対応はどのようにあるべきかについて考えることが重要であるが、その前に米国政府の対応を知っておく必要がある。そのため、本日は連邦緊急事態局(FEMA)ピッチアーノ地域行動局長よりお話頂き、米国の対応について勉強することとしたい。2点目は日常的に邦人が直面している問題について意見交換を行うことである。これらは安全上の問題のみならず色々な問題があろうが、総領事館としてはこれら邦人の方々が直面している問題をできるだけ多く承知したいと考えているので、この場で皆様よりお話頂きたい。これら問題について総領事館としてどのような対応ができるか考え、またメンバーの方々全体としてどのようなことを行うべきかということを考えて行きたい。
連邦緊急事態管理局(FEMA)による緊急事態対策の説明
(ジョー・ピッチアーノ地域行動局長)
(1)まず簡単にFEMAについてご説明致したい。FEMAは国家安全保障省の一部であり、ハリケーン、地震、大量破壊兵器等による緊急事態時に対応することとなっている。FEMAは10の地域オフィスが設置され、私はニューヨーク、ニュージャージ及びプエルトリコとバージン諸島を含むカリブ海地域を担当している。我々FEMAの使命は州や地方公共団体を始め一般個人の方々の緊急事態に対する不安にどのように対処していくかである。
(2)緊急事態対応は災害現場に居合わせた人による対処、州政府や地方公共団体による時間を置かない支援、連邦政府による追加的支援とそれぞれ対応が異なる。FEMAがニューヨーク地域において行ったなかで最も大きな活動は同時多発テロ事件であり、約2年半に渡り6,000人の人員を投入し復旧に当たった。被害者個人の家賃の支払い問題の解決を始め、心のケアーなどのカウンセリング活動も行っている。
(3)この夏共和党の大会がニューヨークにおいて実施されるが、交通面、ビジネスへの脅威が予想されるため、FEMAではシークレット・サービス、FBIと協力して1年以上前から準備を進めており、警備を確実なものとするために、警察犬を配備したり、8番街に臨時の橋を架設したり、マンハッタンに入る車両、人のチェックを厳重に行うことを計画している。
(4)本日、安全対策に関する資料を数種持参したが、特にニューヨーク市が作成した緊急事態対策資料「READY
NEW
YORK」は緊急事態が起きた際を想定してのシェルターの設置場所から、生物・化学テロが発生した際の対処法等、緊急事態対応を考える上で最良の資料と思われるのでご活用願いたい。
FEMA作成の資料「ARE YOU
READY」は包括的な内容であり、同時多発テロ事件を経験された方には本資料が有益であることを判って頂けると思う。
また、自然災害に対しては、ナショナル・オーシャニック・アドミニストレーションというシステムがあり、竜巻や洪水などの天災が発生した場合にラジオ放送が自動的に発信を開始し危険を知らせるものであるので、このラジオ放送があることをご承知頂いて必要に応じ活用頂ければと思う。
(5)FEMAでは市、州や連邦政府機関と連携して緊急事態時の人の安全確保に努力している。ニューヨークに関しては、多数の死傷者が出るような緊急事態が発生した場合を想定した準備を行っている。通常市や州政府が手に負えないような災害が発生した場合には、連邦政府により緊急事態宣言が発せられるが、このような事態が起きた場合、1−800番の無料でかかる電話照会で被災者等からの質問・要望に対応できるシステムを構築した。この電話照会システムでは家賃の問題、ローンの問題、心のケアーの問題等被災者から寄せられる要望について国籍を問わず受け付け、3日以内に回答を行うことを目指している。
(6)ここに出席されているような人の安全確保を考えなければならない立場の方々には、安全確保を行うため、会社や組織において日常から計画の予行演習を実施することが不可欠であることを是非お伝えしたい。計画を開発することと、実行できる能力が必要である。如何に立派な計画があっても、常に演習し準備を行わなければうまく行く訳はない。
以下質疑応答
(問:海安協メンバー)
全米では災害時に対応するICS(Incident Command
System)システムが導入されていると聞いているが。また、最近同時多発テロ事件発生時に警察と消防の連絡体制が悪かった旨の報道がなされているがどうか。
(答:ピッチアーノ局長)
ICSは災害が発生した際どのように対処するかを国レベルで計画、活動、ロジ、管理について定めたものである。また、ICSでは災害時の最高責任者を定めている。ニューヨーク市は現在のところICSは導入されていない。同時多発テロ事件における警察と消防の連絡体制については、全米の問題である。ニューヨーク市では市長が率先して災害時に統合された指揮系統で活動できるよう働きかけを行っているが、解決までには時間がかかると思われる。
(意見:海安協メンバー)
同時多発テロ事件が発生した直後、赤十字やボランティア等が現場での活動を開始しスムーズに進捗していたが、その後ニューヨーク市が入ったとたん支援活動に混乱が生じたと感じた。
(答:ピッチアーノ局長)
全ての災害は混乱を伴うものである。多くの人々をコーディネイトしてゆくのは難しい。しかし、我々は3日間という短い期間に6,000人もの人員を動員して2年半使えるシステムを構築したことを誇りに思っている。先程のICSの話でもあったが、同時多発テロ事件時、ニューヨーク市長がリーダーシップを取り重要な役目を果たしたと考えている。
(問:海安協メンバー)
在留邦人も様々な条件の下で生活しているが、災害対策として何をしておくべきか、また、災害が発生した場合には米政府、日本の領事館のどちらから先に情報を入手すべきかお教え願いたい。
(答:ピッチアーノ局長)
災害対策については先程ご説明した資料「READY NEW
YORK」が個人が安全対策を考える上で非常に有用であるので参考として頂きたい。
災害時に備え、重要な電話番号リストを作っておくことや、何か起きた時に何処に行ったら良いか、各人がどのようなものを用意しておくべきか等日頃から考えておくことが重要である。米国では緊急時に各地域ごとに対応するプログラム(Community
Emergency Responsible
Program)があるので、日本人の方もこれを参考にされてはどうか。
災害発生時は電話は最初から通じないということを覚悟しておくこと。各個人が先に説明したような災害時に備えたチェックリストを用意し、避難先をあらかじめ決定する等万全の対策をとっておくこと、また、個人が緊急事態発生時のために作成した家庭用の計画は勤務先や地域が策定した緊急事態対策計画に合致する必要がある。
(問:海安協メンバー)
仮に災害が発生した場合にはテレビ、電話、インターネットといった手段が使えなくなる可能性があるが、この際には災害に係る情報をどのように得ればよいのか。
(答:ピッチアーノ局長)
ニューヨーク市では災害が発生した最初の24時間〜48時間はそれぞれが自力で持ちこたえてもらいたいと考えている。住民全ての要求に対応することは困難である。最初の48時間は各個人が策定した緊急事態計画に従い行動し、周囲の状況を見つつ判断すること以外にないと考える。例えば異臭がすれば換気を停止するなどの措置を皆さんご自身が取って欲しい。
最後にご参加の皆様にご質問申し上げたい。皆さんはそれぞれのご家庭で災害時の計画を立てておられるか、その時に備えて現金を少しは用意しておられるか、家族の間で避難のための地図を用意しておられるか、災害は非常な混乱が予想される中で使える計画を用意することが重要であることを申し上げたい。
邦人が直面する問題について(意見交換) FEMAピッチアーノ局長による防災対策説明及び質疑応答に続き、邦人が直面する一般問題について以下の通り意見交換が行われました。
(1)運転免許証を巡る問題について
(問:海安協メンバー)
米国運転免許証の問題について申し上げたい。昨年よりI−94の有効期限が自動車運転免許証の欄に記載されるようになった。従って、運転免許証の有効期限とI−94の期間とのずれがあるために、邦人によっては不利益を被っているやに聞いている。また、ニュージャージー州とニューヨーク州についても取扱いが違っているようであるので、総領事館としてどのように認識しておられるか承知したい。
(答:総領事館)
運転免許証に記載される免許の有効期限とI−94の滞在許可期限の問題については、当館ホーム・ページにも掲載しているが改めて説明させて頂く。ニューヨーク州の新たに発行される運転免許証にはI−94の滞在許可期限がスタンプされることになった。それによりI−94の滞在許可期限が自動車運転免許証の有効期限にどのような影響を与えるのか、否かについての質問が当館に寄せられた。当館よりニューヨーク州当局に問い合わせ、I−94の滞在許可期限は運転免許証の有効期限にはなんら影響を及ぼさない旨を確認した。
他方ニュージャージー州では新たに発給された自動車運転免許証の有効期限がI−94の滞在許可期限の影響を受けることになり、滞在許可期限までしか運転免許証の有効期限を貰えないこととなった旨、在留邦人より当館に連絡があった。右に対し当館より同州当局に確認したところ、ニュージャージー州では法律に基づきI−94の滞在許可期限が通常の運転免許の有効期限より短い場合には、I−94の滞在許可期限を運転免許証の有効期限として発給する旨の回答を受けている。例えばI−94が2005年の1月まで有効の方の場合は、運転免許証の有効期限はI−94の期限2005年の1月に滞在更新手続に要する3ヶ月を追加した期間となる。
(問:海安協メンバー)
本件運転免許証の問題については一部邦人の方が不便を被っておられることが判ったが、これに対してこちら側から何か善処を申し入れることはできないのか。
(答:総領事館)
先程説明させて頂いたが、当館よりニュージャージー州当局に対し邦人に不都合が生じているとして改善申し入れを行っているが、本件が同州の法律に規定されており行政当局としては対応が難しいとの状況にある。本件は日本人のみならず外国人全てに関連ある話であり、改善要求の機運が盛り上がることが必要と感じている。
(問:海安協メンバー)
ニュージャージー州では外国人が運転免許証を更新可能なDMV事務所は4箇所しかないのが現状である。そのうち、邦人が居住する地域の事務所は1箇所のみであり、同地域は外国人が多く住んでいる地域であるため、I−94の問題を抱える人達が殺到するため、スムーズに手続が行えず苦労している状況である。ついては、可能であれば我々外国人の免許更新を取扱える事務所を増やしてもらえるよう申し入れをして頂けないだろうか。
(答:総領事館)
ご指摘のお話についても、当館ホーム・ページに掲載している。ニュージャージー州で外国人が免許証の申請が可能なDMV事務所は4箇所しかない。本件について当館では2年以上前から取扱事務所の増設等の申し入れを行っている。これに対し、「ニ」州側は新しい事務所の設置については研究段階の旨であるが、免許の更新手続のみについては他のDMV事務所が利用できるよう検討し、一部のDMV事務所への業務の偏りを是正し事態の改善を図りたいとしている。
(2)治安問題
(報告:海安協メンバー)
メモリアル・デーも近い5月28日、自分の妻が37丁目と3番街を歩いていたところ、前から歩いてきた男性にすれ違いざまに、肘で胸部を打たれた。そのまま男は何事もなかったように平然と歩いて去った。同日妻はバレー鑑賞の予定があったため、警察を呼ぶなどしなかった。幸いにも、怪我や打撲症もなかったが心理的なショックがあり、その後暫く、一人歩きが出来なくなった。
これはメモリアル・デーを控えた日本人に対しての一種のヘイト・クライムであるのか、類似した事件の有無について承知したい。
(答:総領事館)
お話頂いたようなものと同様のケースの発生は報告を受けていない。当地でこのように理由も無く暴力を受けるようなことが他にも発生しているのであれば、注意喚起を行う必要があると思われるので情報を入手した方は随時当館に報告頂ければありがたい。
(3)危機管理に関して
(問:海安協メンバー)
日本人には企業や組織と連絡体制を有する方がいる一方、全く日本のコミュニティに属さない方々が多数生活している。これらの方々に対し緊急事態が発生した場合の連絡をしてゆく方策も検討する必要があるのではないか。また、どのようにしたらこのような方々と緊急時の連絡体制を構築することができるであろうか。
(意見:総領事館)
海外で安全を守る方法として一番良いのは、その土地のコミュニティに溶け込むことであると云われている。何か大きな事件が発生しても、隣近所と付き合いが無ければ逃げ遅れたりする。日頃から付き合いがあればいろんな情報が入って来て、安全が守れるのだと思う。従って、日本人と付き合わない方々の場合はその土地のコミュニティに組み込まれるようにして、緊急事態の際には即座に情報を入手し自分の身を守れるようにすることが特に必要であると思う。
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