海外安全対策連絡協議会(第21回)
2005年11月3日
11月3日、日系関係15団体の皆様が出席し、第21回目の海外安全対策連絡協議会(海安協)が開催され、邦人の安全対策等について協議が行われました。
今回の海安協では、冒頭総領事館佐藤首席領事より、(1)テロや天災など緊急事態における備えの重要性についての説明があり、(2)ニューヨーク市警本部捜査官より「NY市におけるテロ対策」についての説明、(3)当館医務官より「鳥インフルエンザ情報」の報告、(4)担当領事よりハリケーン・カトリーナ災害に伴う現地対策本部への応援出張について報告がありましたので、それぞれの概要について以下のとおり紹介します。
安全対策協議会とは
当地の治安やテロ情勢及び邦人の安全対策等について情報交換を行うため設置され、当地日系団体、日系メディア、旅行業界など関係者が参加して、年4回(四半期毎)会合が開催されています。
第21回海安協開催挨拶
佐藤博史首席領事より、過去3ヶ月に発生したテロ事件及び大規模な天災による被害に関する報告と、テロや天災に対する緊急事態への備えの必要性と、家族間での連絡の重要性について説明がありました。
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ニューヨーク市警本部捜査官より「NY市におけるテロ対策」についての説明
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当館医務官より「鳥インフルエンザ情報」についての報告
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担当領事より「ハリケーン・カトリーナ災害に伴う現地対策本部への応援出張」について報告
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1.佐藤首席領事開会挨拶
(1)総領事館の佐藤博史と申します。開会挨拶というほど大げさなものではありませんが、この海外安全対策連絡協議会を開催するにあたり、私のほうから一言ご挨拶申し上げます。
(2)この会議はご承知のとおり2ヶ月に1度行っております。前回この会議を行いましたのは7月8日でした。たまたま当日の朝、ロンドンで地下鉄テロ事件が起こり、当時会議の冒頭でその話にふれた記憶があります。
それから今まで3ヶ月の間、世界中でどんなことが起こったのか先ほど考えてみました。
(イ)7月8日ロンドン地下鉄テロ事件が起こり、このときは50名以上の亡くなられた方の出た大変な事件でした。7月21日ロンドンで2回目の地下鉄テロ事件が起こっています。幸いにしてこの時は、一回目ほど大きな事件ではありませんでしたが、負傷者の方がだいぶ出たということです。
(ロ)8月29日アメリカニューオリンズを中心とする南部地域でハリケーン・カトリーナという大きな台風が襲い、1,121名が亡くなられたという天災が起こっています。
(ハ)10月1日インドネシアバリ島でテロ事件が起こっています。バリ島は数年前にも大きな事件が起こっていますが、これで2回目の大規模テロが起こり、このときは日本人1名を含む20名が亡くなられています。
(ニ)10月6日、結局大事に至らなかったが、当地でも地下鉄でテロが起こなわれるという情報を警備当局がキャッチし、厳戒態勢に入ったという時期がありました。結局、この情報の信頼性は、はっきりせず数日後には解除となりました。
(ホ)続き10月8日、これも天災ですが、パキスタンで大地震が起こっています。これはご承知のとおり、亡くなられた方は7万4千人に及んでいると報道されています。
(ヘ)10月29日インドにおいて同時テロが起こっており、亡くなられた方は59名に及んでいます。
(3)このように、われわれが前回この会議を行ったあと今日に至るまで世界中でこれほど多くのテロ事件や天災による緊急事態が起こっています。
従いまして、私たちがこの会議で議論する日本人の安全対策という観点からしても、決して脅かしたりするわけではありませんが、NYについても、また緊急事態あるいは大規模な天災であれテロであれ起こる可能性は全く排除できないわけで、そのための準備をわれわれは常日頃よりしておかなければならないというように思っています。
(4)先週、この総領事館内で緊急事態を想定し、迅速に対応するための訓練を行いました。大きなテロ事件が起こったことを想定し館員全員が集まり、現地対策本部を作り、総領事館で行わなければならない作業をするという訓練を行いました。
こうした事件が起こらないことを望みますが、起る可能性は排除できないので、私たちもそのような準備、心構えを行っているわけです。
みなさまにおかれましても、それぞれのグループでそうした緊急事態となった場合のグループとしての役割、それぞれのグループの方々の安全をいかに守っていくかという観点から、いろいろな緊急事態における行動計画を考えておかれればよろしいかと思います。
家庭レベルでは、家族が離れたときの集合場所を決めておく、日頃からある程度の備蓄をしておく等行っていただくことが必要だと、ここ3ヶ月間に起こった事件をみても思いますので、そういうことをおすすめします。
(5)(イ)後ほどハリケーン・カトリーナに伴う邦人保護のためヒューストンに応援出張した松原領事より報告がありますが、一つはそのような事件が起こったときに皆さんにお願いしたいのは、例えばNYで事件が発生した場合、日本では、皆様のご家族が心配されています。従いまして、無事な場合は、何らかの形(電話、メール等)で、心配しているであろう日本のご家族のみなさんに早く連絡していただくことが大変重要です。
(ロ)ハリケーン・カトリーナや津波など災害が発生した場合、日本のご家族から、外務省や現地の総領事館に沢山の安否を尋ねる電話があります。
(ハ)我々はそのような連絡を受けて安否確認作業を行いますが、連絡先のわからない方の安否確認は困難を極めます。
NYには在留届を出されている6万人以上の在留邦人、常時5千人の邦人旅行者があることから、全ての方と連絡を取るのは不可能です。
皆様が日本のご家族に連絡を入れていただくことにより、外務省・在外公館への問い合わせが減り、その分の勢力を実際に怪我された方や亡くなられた方のご家族への支援に回せることとなります。
怖い話ばかりで恐縮ですが、この3ヶ月の情勢をみていると、そうした緊急事態が起こることを念頭に、ご一緒に考えて参りたいと思っています。
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2.NY市におけるテロ対策について
(ニューヨーク市警本部カルデローン捜査官)
(1)ご紹介に預かりましたNY市警のカール・カルデローンと申します。
本日は、テロについて説明し、皆様のテロに対する関心を高めたく参上しました。
本日は、
?@NY市警の使命。何を目標としているか。
?A9.11以降どのような変化があったか、どのような目標を持っているか。
?Bテロリストの行動について、どのように気づけばよいか、どのように記録をとったらよいか。
といったことを中心にお話したいと思います。
(2)NY市警の使命ですが、NY市警は地域の皆さんと協力して、法の遵守、不安の軽減、治安の維持を強化することにより、NY市民の生活の質の向上を図ることです。また、市民の生命及び、財産を守ることもNY市警の使命であります。そのためにNY市警は、全てのNY市民のみなさんに、常に丁寧に、プロフェッショナルな精神を持って、尊敬の念を持って接しています。
また、法の執行について、常に公平でありたいということ、あらかじめ不法行為を防ぐことが重要であり、犯罪者の追及を常に徹底的に行うことがNY市警の使命です。
(3)2001.9.11事件以来、警察の行っている行為も変わってきました。NYは311平方マイルの中に800万人以上の方が住んでいる人口の密集した地帯です。
現在、NYの犯罪の発生率はここ40年で最低となっております。これは、警察の働き、及びコミュニティーの皆様の協力活動、それに基づきこのような率が達成できました。
この様に、一般の犯罪は全て減少しています。現在NY市警では「解放された警察署」ということで、どのような方でもいつでも入っていただきアクセスできる政策を取っています。警察署の中に入っていただくとピン・マップなどご覧いただき、それによりどの地域でどのような犯罪が起こっているのかすぐにわかるようにしています。
また、警察は皆様の寄付を元にパンフレットを配るという広報事業を行っています。例えば、銃に関し、銃の供給者の情報提供者に100ドルを提供するという「ガン・ストップ」というプログラムなどです。
(4)テロリストの使命について
(イ)FBIの定義によれば、テロとは自分たちの政治的なあるいは社会的な目的達成のため、人的、資産的違法な暴力を行使し、政府を威圧しようとする行為です。
テロリストの目標は、第一に(a)資産、資材の調達、恐怖心を人々の心に植え付けるということ、(b)自らの目的を認識させること、(c)政府の反応を引き起こすことなどです。
(ロ)至近の例では、2004年3月11日マドリッドにおける車両爆破事件がありますが、これはアルカイダが行ったものであり、イラク戦争へのスペイン政府参与の抗議をして行ったものです。
(ハ)このマドリッドでの事件では、191名の命が失われました。その結果、スペイン政府はイラク派兵を撤退しましたので、目標を達成したことになります。
(ニ)テロリストの作戦を段階的に分けて分析すると、偵察、計画、リハーサルといった実行する前の第一段階があります。
次はテロ活動の実行段階で、実際に行動を起こし現場実行する。これが第2段階です。準備段階にさかれる時間は、テロリストの活動の約70%を占めます。その段階で地域の皆さんが気が付かれる情報を記録に取ることが可能と思われます。
(ホ)一般の犯罪とテロは同じ犯罪ですが、目的が違います。一般犯罪は自らの利益獲得であるのに対し、テロは政治的社会的目的達成のために自らの思想によってけしかけられた不当な暴力行為です。世界中にはいろいろなテロリストが存在します。
現在、世界中でFBIがリストに載せているだけで182にのぼる組織が存在します。NYは人種のルツボといわれていますので、例えば中近東からだけの組織だけに注意を払っているだけでは足りないかもしれません。
(へ)テロリスト・犯罪のための必要な要素は、(a)強い願望、そして(b)目標達成のための能力、(c)目標達成の機会を与える、この3つです。
従って、NYで個人の安全を守るため、最も有効なテロを防ぐ方法は、テロリストの目標達成の機会を取り上げることです。
そのためには、鉄道や空港、周囲で何が行っているかいつも注意していただきたいと思います。
また、ATM、銀行等でIDを盗まれないように銀行のATM機を使用するなどしていただきたいのです。
MTA(Metropolitan Transportation
Authorities)は、民間の方に関心をもってもらいたいキャンペーンとして、「何か見たらそれを言って下さい」というものを行っております。大きなかばんが放置されていたり、怪しい人物がいる場合には、すぐに当局にお知らせ下さい。
緊急連絡先として「911」の電話番号がありますが、英語が不自由であれば、通訳サービスもついています。それほど緊急ではない情報は「311」にご連絡いただきますとNY市警のテロホットラインにつながりますので、こちらで情報提供をお願いします。
連絡していただきたいのは、異常な行動をとっている人、天候に合っていない服装をしている人、荷物でワイヤーが出ているもの、油がついた紙などについてお願いします。
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3.鳥インフルエンザ情報
(1)8月末に着任しました医務官の仲本です。
前任はインドでした。インドに限らず東南アジアでは、市場では鮮度を保つため生きた鶏をそのまま市場に置いているということがあります。
(2)先日ブッシュ大統領の演説がありました。1日、大統領は鳥インフルエンザ対策として、アメリカ政府として初の包括的な国家戦略を発表しました。ワクチン製造を迅速化させるための対策費などとして、計71億ドルの緊急支出を議会に要請、戦略の柱として、(イ)世界中での人や動物への大きな流行をすばやく察知し、封じ込める。(ロ)ワクチン、抗ウイルス薬の備蓄、(ハ)州政府、地方レベルの対策の推進を列挙しています。
(3)鳥インフルエンザとはいったい何なのか。鳥類の間で流行するインフルエンザです。これは人の間で流行するインフルエンザとは全く異なります。家禽類を中心に急速に感染が広がり、時に大量死を引き起こします。
原因ウイルスは、理論上135種類あります。そのうちH5型、H7型といわれているものは、一部毒性が強く、「高病原性・鳥インフルエンザ」と呼ばれ、鳥が感染した場合の死亡率は90%以上といわれています。
昨年来、東南アジアで発生している鳥インフルエンザ(H5N1型)の人への感染では50%以上の高い致死率となっており、問題となっています。
(4)鳥インフルエンザの流行の記録について
(イ)1983年アメリカでH5N2型が流行し、養鶏1700万羽処分されています。
その後メキシコ、香港、イタリア等にて時折流行しており、2003年より流行が連続的となり、2005年6月以降現在までにすでに1億5千万羽を処分しています。
なぜ今、鳥インフルエンザの流行が問題なのでしょうか。
(ロ)H5N1型のウィルスに、ヒトからヒトへの感染能力が備わると、爆発的な流行を引き起こす恐れがあるからです。現状では、鳥からヒトへの感染能力は弱い現状です。また、ヒトからヒトへの感染はないと一応言われております。現状で鳥から感染したヒトは、鳥と濃厚な接触をした方に限られた場合となっております。
鳥インフルエンザの流行の規模や、鳥からヒトへの濃厚な直接感染が散発している現状から見て、流行している鳥インフルエンザから近い将来、新型のヒトインフルエンザになる可能性が指摘されており、これが問題です。
(ハ)改めてヒトインフルエンザの流行の記録を見てみましょう。20世紀に入り、3回の大きな流行がありました。1918年のスペイン風邪は、死者5千万人と言われております。1957年アジア風邪は1,200万人、68年香港風邪は100万人といわれています。
最近の研究で、これらのインフルエンザは元は鳥インフルエンザであることが判明しています。それは渡り鳥から始まるウィルスの異動によるものです。
(ニ)カモなど野生の水鳥は、感染しても発病せず、無症状でウイルスをフンとして排出し続けます。これが保菌者となります。そして、カモなどの渡り鳥は、冬場湖沼地帯に降り立ち湖沼の水をウイルスで汚染するのです。その後、水を介してあるいは直接、養鶏に感染します。養鶏は感受性が高く、病原性が高いため、死亡に至ります。養鶏と共存する豚・馬・アヒルなどにも感染し、鳥からヒトに広がっていくというわけです。これをまた別の地域に繰り返すのが、今現在起きている状況です。
(ホ)次に、ウイルスの構造をみてみましょう。ウイルスは、直径0.1−0.2ミクロンの球形で、表面はウニの棘に似ており、2種類のスパイクで覆われています。内側に遺伝子の本体があります。このウイルスがヒトの内部に入ると中身が出てきて、遺伝子がばらまかれます。この時、豚のインフルエンザと馬のインフルエンザを同時に感染していると、ウイルスの変異が起こる可能性があります。
例えば、豚の体内で混合し、別の新しいウイルスが誕生することがあります。このことを遺伝子の再集合といいます。この変異は豚や馬のみならず、ヒトでも起こると言われています。そこで、このようなことを起こさないために、せめてインフルエンザ予防接種をしましょうということになります。遺伝子再集合によりヒト・ヒト感染力を獲得し、ヒトインフルエンザになった場合、免疫がないので、世界中で爆発的な感染を起こす可能性があります。通常の適応による遺伝子の変異の場合には、多少時間がかかります。
(ヘ)それでは、現状においてどのように注意をすべきでしょうか。
まず、ワクチンについてですが、新型インフルエンザになった場合は、どのような遺伝子配列か抗体状況が不明であるので、ワクチンが有効か不明です。ワクチンは、流行が始まってから数ヶ月かかります。ですから一般的な予防措置、つまり体力維持、免疫力を高める、うがい・手洗い・マスクは意外と有効です、これらを行うことが必要でしょう。
また、マーケットで生きた鳥には近づかないことでしょう、近づく場合は、マスクなどをしましょう。もし、鳥をさわったら手を洗いましょう。
(ト)インフルエンザウイルスは熱に弱いので70度で1分間火を通せば死滅します。鳥を食べるときはよく火を通す、生卵は食べないことです。
インフルエンザの薬についてですが、タミフル・ビレンザ等があります。発症後48時間以内に処方すれば有効ですので、早めに医療機関へ受診して下さい。
最後にインフルエンザの予防です。流行している場合は人ごみをさける、体力維持、免疫力を養う、うがい・手洗い、ワクチンの接種といったことです。ワクチンの接種は。発病を6割、重症化9割阻止し、新型ウイルスを作らない予防効果があります。
なにかご質問があればいつでもお問い合わせください。
(質疑応答)
(質問:大島委員)NYで生活しておりますと鳩が多いですが、鳩は大丈夫でしょうか。
(回答:仲本医務官)鳩も感染します。
その場合は領事館より注意のお知らせを流させていただきます。
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4.ハリケーン・カトリーナ災害に伴う現地対策本部への
応援出張について(松原領事)
邦人保護を担当しております、松原です。
本年8月末にアメリカ合衆国南部を襲った大型ハリケーンのカトリーナが引き起こした災害に伴いまして、9月14日より約2週間、テキサス州の在ヒューストン日本総領事館内に設置されました現地対策本部で邦人の安否確認作業を行いましたところ、概要を報告します。
(1)(イ)ハリケーン・カトリーナは、8月20日、ハバナ東南で熱帯性低気圧として発生しております。そして24日には熱帯性暴風となり「カトリーナ」として名付けられました。8月25日には更に発達しハリケーンとなり、フロリダ半島を通過し、ルイジアナ州に向け進路をとっております。
(ロ)これに対し、8月28日、ブッシュ大統領はルイジアナ州に非常事態宣言を発出しましたが、ハリケーン・カトリーナは翌29日にルイジアナ州に上陸し、勢力を落としながら北上し、最終的には、31日の深夜、カナダ南東部に達し、前線の一部となっています。
(2)(イ)皆様ご存じの通り、ルイジアナ州ではニューオーリンズ市などで事前に市民に避難命令が出されましたが、海岸に面したニューオーリンズ市で特に被害が激しく、市の陸上面積中約8割が水没する惨事となりました。
(ロ)このハリケーンによりニューオーリンズ市の公共サービスは完全に麻痺し、移動手段を持たない低所得の方々は取り残され、また、市内の食料品店などで略奪行為が続発し、放火と見られる火災も発生するなど、市内は一時無法地帯となりました。
このハリケーンに伴う死者の数は、ルイジアナ州、ミシシッピー州併せて最終的には1190人に達しています(ルイジアナ972人、ミシシッピー州218人)。
(3)(イ)在ニューオーリンズ総領事館では、一部を除いた館員宿舎、現地スタッフの住居が浸水による被害を受けました。
(ロ)直接の浸水被害を受けなかった総領事公邸、事務所もハリケーンにより窓等の破壊や断水、停電により機能が麻痺し在外公館としての活動が不可能となったため、ニューオーリンズ総領事館館員は最も近隣のテキサス州にあるヒューストン総領事館内に移動し、対策本部を設置、管轄地域内の在留邦人の安否確認作業を開始しました。
(ハ)この安否確認作業にはニューオーリンズ総領事館館員の他、外務本省、在米大使館、サンフランシスコ、ロサンゼルス、デトロイト、ニューヨーク総領事館から職員が、またマイアミ総領事館からは医務官が派遣されましたが、体制としてはヒューストンの対策本部及びルイジアナ州バトンルージュ、ミシシッピー州ジャクソンの現地安否確認作業班に職員が張りつき確認作業を行いました。
(4)在ニューオーリーンズ総領事館に提出のあった在留届は1,106人で、この中から邦人の安否を絞り込んでゆくこととし、当初次の方法により邦人の安否確認作業に着手しました。
(イ)在留届の連絡先、在留地連絡先、緊急連絡先及び本邦連絡先に電話連絡を行い、安否を確認する
(ロ)在留届記載者の旅券申請用紙記載の本邦緊急連絡先に電話連絡を行い、安否を確認する
(ハ)職員が直接在留届上の住所を訪問し、また、避難者の集まるシェルターを回り安否を確認する
(ニ)本邦親族からの電話による安否照会を受けて、安否を確認する。
(5)(イ)今回のような広範囲にわたる災害が発生した場合には、災害を受けた地域にどれだけ邦人がいたかについてすぐに把握することは困難であるため、安否確認作業は当然邦人の方々が提出した在留届に基づくものとならざるを得ないのですが、提出された在留届の住所にご本人が現在も引き続き居住しているかは不明であるといった、在留届の情報が邦人の方の正確な居住情報を反映していないといったジレンマもあり、対策本部ではある一定数の安否確認を行った後は作業が進まず頭打ちとなっていきました。
(ロ)このような事情から、10月14日、ある報道機関は、在留届中の未確認件数のみを捉え、「未だ156人の安否が不明」となっている旨大きく報道しました。
(6)(イ)このような現状に対し、対策本部では安否確認をより効率的・早急に進めるため、ハリケーンによる直接被害を受けた地域とそうでない地域に分け、被害を受けた地域の
(a)ルイジアナ州では
ニューオーリーンズ郡
ジェファーソン郡
セントターマニー郡
プラークミン郡(在留届数352人)
(b)ミシシッピ州では
ジャクソン郡
ハリソン郡
ハンコック郡(在留届数86人)
に在留届のある438人を「重点地域」の邦人としてターゲットとし、
ルイジアナ州バトンルージュ、ミシシッピー州ジャクソンの現地安否確認作業班はこの地域に絞り、安否確認作業を着手しました。
(ロ)また、外務本省ではこの重点地域に在留届を出し、連絡が取れなくなっている邦人の方で、在留届に記載された日本国内の緊急連絡先が転居等により不明となっているケースについて追跡調査を行い、現地本部と外務本省の両面で絞り込みを行い確認作業を行って行きました。
(ハ)さらに、安否確認のとれていない邦人の方が既に他のアメリカにある日本総領事館の管轄地域に転居している可能性もあったため、在米各公館へ同一氏名の在留届出の有無について確認要請も行いました。
これに平行し、
(ニ)定期的に「安否不明となっている邦人のリスト」を作成し、米国国務省宛に送付すると共に、
(ホ)バトンルージュ、ジャクソンの安置所に現地安否確認作業班より定期的に連絡を行いました。
(7)邦人犠牲者
最終的にこのハリケーンにより、既に新聞報道等でご存じかと思いますが、ミシシッピー州に生活しておられた女性が亡くなったことを確認し、日本から来られた親族の方々に対しては、ミシシッピー州ジャクソンの現地安否確認作業班で作業を行っていた領事館職員が死亡手続に関する支援を行っております。
(8)ハリケーン・リタの上陸
(イ)このようにカトリーナの安否確認作業を続ける中、新たにハリケーン・リタが発生し、一時はハリケーンとしては最大級のカテゴリー5に成長し、南部に進路を進めてきました。これに伴い、テキサス州のヒューストン、ガルベストン、コーパスクリスティの湾岸沿いの住民130万人とルイジアナ州の湾岸沿いの住民2万人が避難を開始し、ハリケーンを避け北上する車で高速道路は渋滞し、ガソリンスタンドもガソリン切れで閉鎖となり、燃料のなくなった車が路肩に乗り上げた状態になりました。
(ロ)対策本部のあるヒューストン総領事館の入居するビルはリタの上陸に備え、9月22日(木)午後5時より25日(日)まで閉鎖することを決定したため、ヒューストン総領事館と同事務所に現地対策本部のあるニューオーリンズ総領事館はヒューストンから退避するか、待機するかについて協議を行い、結果当面それぞれの住居・宿泊先に避難し待機することとし、その間の安否確認作業は電話のみによる最小限の作業にとどめることとしました。
(ハ)ハリケーン・リタは、9月24日(土)午前2時頃、テキサス州とルイジアナ州の境界近くの沿岸に上陸しましたが、幸い勢力がカテゴリー3に落ちたことと、ヒューストンの東側を通過したため、ヒューストン市内に避難していた館員には大きな被害はありませんでした。
(ニ)他方、ルイジアナ州南西部のレイクチャールズ市がリタによる被害を被ったことが判明したため、本部は、新たに同地域に在留届を出している13人の安否確認作業を開始しました。
(9)今回の安否確認作業で感じたこと
(イ)今回の安否確認作業を通じ、在留届を整理し、正確な情報を維持していくことがいかに重要であるかを感じました。
(ロ)一般の在留邦人の方は、現地に到着したり、赴任した際には在留届を出すことについて、外務省の広報などもあり、よく提出がされていますが、離任・引っ越しの際に在留届を取り下げてゆくといったマインドがないように思われます。従って、記録だけの邦人数が増えてゆき、緊急事態にはこの幽霊邦人数と格闘し、大きな時間を割く必要が生じていったと感じています。
(ハ)また、このような広範囲な災害などを想定し、在留届以外による安否確認作業を開発することが必要であると感じており、急務と考えます。更に、最も重要なのは、このような緊急事態が発生した際には、そこにいらっしゃる邦人の方がまず、ご自分の無事を日本のご家族に連絡して頂くということであると考えます。
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