海外安全対策連絡協議会(第25回)
2007年12月11日
安全対策協議会とは
当地の治安やテロ情勢及び邦人の安全対策等について情報交換を行うため設置され、当地日系団体、日系メディア、旅行業界など関係者が参加して、定期的に会合が開催されています。
沼田首席領事開会挨拶
冒頭、沼田首席領事より開会の挨拶がありました。
- 5月に佐藤首席領事の後任として香港より転勤してきた沼田です。着任して半年が経過しました。着任した際に桜井大使から指示されたことは、領事関係業務を改善せよということでした。特に邦人関係の業務については、種々批判もあり、その声に耳を傾けて改善せよということでした。これが最初の私に対する指示でした。
- では、半年間で何ができたかということについて、皆さんに言えることがあるとすれば、昼時間に領事窓口をオープンしたということだと思います。その他にも、領事窓口におけるさわやか行政サービスを進めています。
- 皆さんの当地における生活上の安全を如何に考えるかということ、邦人援護業務は、私たち総領事館の主要な任務ですが、それが今日まで皆さんにとってどうだったのか、この点が欠けているとか、ここをもう少し改善したらもっとよくなる等、忌憚のないご意見を頂きたいと思います。批判を謙虚に受け、その上で何ができるか考えたいと思います。ご意見があれば、どしどしこの場で発言して頂きたい。
当地治安情勢・テロ情報
当館警備担当領事より当地治安情勢・テロ情報に関する説明がありました。
- まず、テロに関する情報ですが、12月10日現在、米国全体の脅威レベルは5段階中3番目(真ん中)のイエローですが、ニューヨーク市は、上から2番目のオレンジとなっています。
- 最近、ニューヨーク市に関して最も大きく報道されたものとして、6月にJFK空港の航空機燃料用送油管を爆破する計画を企てていたとして、元ガイアナの国会議員以下3名が逮捕された事件があります。逮捕者の中には空港の貨物取扱をしていた元職員も含まれていたということですが、アルカイーダとの関係はないようです。
- ニューヨーク市において、テロの危険性がある場所としては、空港、駅、橋、トンネルが最も高く、続いて観光名所たる自由の女神、エンパイヤービル、タイムズスクエアー等があげられます。また、概して何らかの記念日や祝日に発生する可能性が高いとも言われています。日頃からテレビ、新聞等のニュース、そして当館からの情報に気をつけて頂きたいと思います。
- 続いて治安情勢ですが、ニューヨーク市警の発表によりますと、12月9日現在の主要7罪種は、前年対比6.57%減の約11万2千件が発生しており、殺人事件は16.3%減の457件と大きく減少しています。殺人に使われた凶器ですが、約67%の278件で銃が使用されています。
- ここ数年、マンハッタン内の家賃が高騰しており、契約更新の際に転居せざるを得ないケースが増えているようです。また、当地に留学生される学生が年々増加しているようですが、学生の皆さんは、経済的事情からクイーンズ区、ブルックリン区、そしてブロンクス区に居住しているケースが多いようです。当館では、「ニューヨーク市の事件発生状況」という資料を作成し、ホームページにも掲載し、毎月更新していますが、ビジュアル的に犯罪発生多発地域を知ってもらおうというものです。これを見れば、どの辺りで凶悪事件が発生しているかよく分かって頂けるものと思いますが、在留邦人の皆さんの居住先が、このような地域に段々近づいていることが気になっています。
- 在留邦人の皆さんの間では、最近ニューヨークの治安は改善した、夜間に女性が一人で歩けるようになったというような声が聞かれるようになりましたが、それはあくまでもマンハッタンの中心部のことであって、他の地区では、まだ多くの事件が毎月発生しています。転居をお考えの際は、ただ家賃が安いからといって安易に犯罪発生多発地域を選ぶことのないよう注意頂きたいと思います。
最近の邦人被害事案の傾向と対策
当館邦人援護担当領事より最近の邦人被害事案の傾向と対策について説明がありました。
- 援護を担当していると、いろいろなトラブルに巻き込まれた邦人の方からありとあらゆる相談が寄せられてきますので、最近どのような事案がどのように発生したのかということを肌で感じることができます。本日は、統計的なことよりも、具体的にどのような事案が発生し、それらを防止するにはどうしたらよいかというお話をしようと思います。
- ポイントは3つあります。一つ目は、観光客等の短期滞在者が巻き込まれる事案です。圧倒的に多いのは、スリ、置き引きの被害で、昼夜関係なく遭っています。置き引き被害の場所としては、ホテルのロビーやレストランが多くなっています。具体例を挙げますと、ホテルのレストランで食事をしている最中にトイレに行きたくなり、テーブルあるいは椅子の上にカバンや携帯電話を置いたまま中座してしまい、置き引きに遭うというケースが結構あります。また、ホテルをチェックアウトする際に、財布やカバンをカウンターの上に置き、目を離したすきに無くなっていたというケースもあります。たとえホテルのロビーやレストランであっても屋外と変わらないというマインドが必要だと思います。
- 二つ目は、在留邦人の方々、特に生活に慣れた在留2年前後の方々が遭う被害事案です。多い事案としては、夜間、早朝に一人歩きをしていて、盗難、強盗の被害に遭うケースですが、その他にも深夜に一人で地下鉄に乗車していて強盗に被害に遭うケースもあります。当地滞在を開始した頃は、安全対策に気をつけていた方でも、生活に慣れてくると油断してしまうことがあるようです。実際に被害に遭った方とお話をしても、当初は気をつけていたが、最近慣れてきてつい、と言われることが多いです。生活に慣れてきても初心を忘れず、油断しないようにすることが大切です。
- 三つ目は、今年の夏頃から増えてきたものですが、日本人が日本人を騙すという詐欺被害事案です。9月に当館ホームページにも掲載しましたが、ウエッブの掲示板による不動産(ルームシェアー)詐欺というものがありました。最近は、当地の家賃が高騰していることもあり、ルームシェアーを希望される邦人の方が増えているようですが、言葉の利便性からか日本語のサイトでルームシェアーの情報を探す方が多いようです。日本人が掲載したルームシェアー募集に応募し、相手の要求するままに契約も交わさず保証金や家賃の前払いをしてしまい、後で詐欺だったと判明した事案が10件ほどありました。その一連の事案の犯人は逮捕されましたが、その後も同じような類の詐欺被害は発生しています。日本人だからといって安易に信じないように気をつけるべきだと思います。部屋の賃貸を行う際には、少なくとも事前に物件を確認した上で契約書を交わすとか、余計な経費がかかるかもしれませんが、信用できる不動産業者を通すとか、そのような防御策が必要であると思います。また、最近、ニューヨークでも日本人によるオレオレ詐欺が発生していますので、注意が必要です。
在留届の提出の推進について
- 当館担当領事より在留届の概要及び当館の取り組みについての説明がありました。
- 参加委員が在留届の提出の推進についてのフリーディスカッションを行い、下記のような意見がありました。
- (イ)企業の社員の中には帰任したにも拘わらず帰国届を提出していないケースもあると思うが、企業ごとのリストがあれば、各企業において確認することが可能であると思う。
- (ロ)不法滞在者が在留届を提出することによって不利益を被ることがあるのか。例えば、米国関係当局へ通報されるようなことがあれば、不法滞在者は提出しないと思う(当館担当領事より、米国関係当局へ通報することはない旨回答)。
- (ハ)郵便等で資料を送付して、戻ってきてしまったものについては、在留届から削除してはどうか。削除をすることによって、より実態に近い在留届のデータになると思う。
メンタルヘルスネットワークからの提言
当館医務官よりメンタルヘルスネットワークからの提言(危機介入時におけるアウトリーチ方法)についての説明がありました。
- テロ、災害(ハリケーン等)多種あるが、緊急時体制の基本的なフォーマットは同一である。NY市作成のReady New Yorkなどが参考になる。(日本語版は、総領事館、NY日系人会などにあり。)
- 平時にメンタルヘルス専門家と他医療ネットワーク、総領事館、学校、米国機関等との連携を行っておくことが重要。その意味で、メンタルヘルスネットワーク会議やジャムズネット会議などは重要である。
- 危機時にヘルプを求めやすいのはまず医療施設(針・指圧などを含む)である。こうした組織とメンタルヘルス専門職とが日ごろの連携・協力体制を取っておくと心のケアに関するリファーラルがしやすい
- NY市によるMRS(Medical Reserve Team)にHealth Professionalとして登録すると、危機介入に関するトレーニングに参加可能となり、MRSを通して危機時に行うボランティア・サービスに関してMalpractice insuranceがカバーされる利点がある
- 平時に有事の際に配布する資料を準備しておくことが必要(大人、子ども、ボランティアの心のケアについて)。
- 平時に有事に備えた団体毎の訓練を行っておくことが必要(クライアント、またボランティア自身の心のケアに対して)。
- 平時に有事の際のボランティアの体制を構築しておくことが有用である。
- 有事における情報伝達の方法としては、多くのチャンネルを利用するべき。テレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどのメディア。大使館の緊急メール。日系商店の店頭での配布など。学校、企業の連絡網など、既存のネットワークを用いると迅速に情報提供しやすい。
- 有事における情報伝達の質が重要で、総領事館、メンタルヘルス専門家、学校などが主体となることが良い。
- 日本人の特性としてスティグマ、受け身の受動的な態度などがある。「子供のケア」という名目で電話ホットラインや講演会・ワークショップなどを行い、その場で大人に関する情報を知らせて、相談を受けられるようにする。また学校に出向いて講演会などを行いアウトリーチするのが良い。「心のケア相談」という名称についても考える必要があり、「よろず相談」とした方が相談しやすい。また心の問題のみならず経済的・手続き的な問題への支援も重要である。
- 有事後、多少落ち着いてきた頃にはグループカウンセリングも有効である。その場においては、アートやミュージックセラピーなど、言葉を使わずに心の中にあるものを表すことができる方法も有用である。
- 危機時のメンタルヘルス専門職自身の心のケアも重要。サポート・グループをつくるなどの配慮が必要。
領事部からのお知らせ
当館領事部担当領事より下記のお知らせにつき説明がありました。
- 鳥インフルエンザに関する厚生労働省からのお知らせについて
- 年末年始の「全米・カナダ邦人安否確認システム」のテスト運用について
- 新しい入国審査について
- ニューヨーク安全マニュアルについて