第35回 海外安全対策連絡協議会(12月13日)
海外安全対策連絡協議会とは
当地の治安やテロ情勢及び邦人の安全対策等について情報交換を行うため設置され,当地日系団体,日系メディア,旅行業界など関係者が参加して,定期的に会合が開催されています。
- 開会挨拶
(阿部康次首席領事)
年の瀬のご多忙の中お越しいただき感謝申し上げる。
今回で第35回を迎える海外安全対策連絡協議会は,在留邦人のそれぞれのグループの代表者が集まって,邦人の安全に関わる意見交換を行う非常に重要な場である。
12月11日,NY市内のポートオーソリティ・バスターミナル付近で爆発テロ事件が発生し,爆発物を所持していたバングラデシュ国籍の容疑者を含む4名が負傷した。本年は当地を含めた欧米各国でテロ事件が発生し,特に当地はこの2ヶ月で2度のテロ事件が発生した。
- 5月 英国・マンチェスターにおけるアリーナ自爆テロ事件
- 8月 スペイン・バルセロナにおける車両突入テロ事件
- 10月,マンハッタンにおける車両突入テロ事件
- 12月,ポートオーソリティ・バスターミナル付近での爆発テロ事件
他方,米国ではラスベガスのホテルやテキサス州・サンアントニオ郊外の教会での銃乱射事件のような銃器を使用した凶悪事件が発生している状況である。
そのような状況の中,本日,ニューヨーク市警察(NYPD)担当者より銃乱射事件への対処ぶりをブリーフいただくこととなり感謝申し上げる。出席者は,ブリーフ内容を所属企業・団体で是非共有いただきたい。
何か在留邦人の安全対策に関する懸念などあれば,当館領事部にご連絡いただきたい。これから年末の休暇シーズンを迎えるが,すり・置き引きなどの窃盗犯も増える時期でもあるので,安全対策を万全にして,楽しく休暇をお過ごしいただきたい。
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NYPD担当者による講義(銃撃事件に遭遇した際の対処方法)
(1) 爆弾テロ・銃撃事案への心構え
○ 常日頃から自分の周囲に気を使う(Situational Awareness)。
・屋外を歩く時にスマートフォンに夢中になりすぎない。イヤホンを付けたまま歩く際も十分に注意する。
○ パニックに陥らないために、銃撃事件等への対処計画を作り、事前に同計画に基づいて訓練する。
・対処計画やマニュアルを作成した場合、そのマニュアルに沿って訓練をすることが重要。何度も訓練を繰り返すことで、仮に事態が発生してもパニックに陥らない。
○ 会社や学校のウェブサイトに施設の図面、警備状況が分かるような情報を掲載しない。また、幹部や社員などの個人情報に関する掲載をしない。
○ 部屋に数時間立てこもる可能性があるので、救急箱などを用意しておく。
○ 必ず身分証明書を常に所持する。または、携帯電話に「緊急連絡先(In case of emergency)」などと連絡先に登録する。
○ ニューヨーク州外の親族や知人で、自分の安否状況を他の親族や知人に知らせてくれる連絡先を確保しておく。
○ ニューヨーク市の緊急管理局(Office of Emergency Management、OEM)のメール、ショートメッセージ通知サービス「Notify NYC」(交通規制、災害、テロなどを通知)に登録する。
※https://a858-nycnotify.nyc.gov/notifynyc/
○ 不審なことがあればすぐに警察に通報する。例えば、バージニアテック大学での銃撃事件の場合、普段、鍵がかかっていないホールの全ての出入口に鍵がかかっていたにもかかわらず、誰もそれを不審に思い、学校関係者や警察に知らせた者は誰もいなかった。また、犯人は、射撃場で通常の標的ではなく、地面に標的を置いて射撃訓練(地面に倒れた人を撃つための訓練)をしていたのに、射撃場の管理者などは警察にその不審な行動を通報していなかった。
(2)爆弾テロ・銃撃事案に遭遇した際の対処方法
12月11日にニューヨーク市マンハッタンの地下鉄通路で発生した爆弾テロのような屋外や人混みでのテロに遭遇した場合の対処方法は以下のとおり。
(イ)爆弾テロ・銃撃事案共通の対処方法
○ 状況を把握し、何が起きたのかを分析する。
・パニックにならず,警察官や室内アナウンスなどから提供される情報に注意を払い,警察官、消防官などの指示に従って行動する。爆弾テロの場合,爆弾を1か所ではなく,複数に設置している可能性があるため,逃げる際は闇雲に逃げず,どこに向かっているかをきちんと把握すること。
○ 建物外や道路に出た際には、一般車両の交通に気をつけること。ニューヨーク市では、テロより交通事故で負傷・死亡する人のほうが多い。道路の縁石近くを歩くのではなく、(縁石から離れた)建物側を歩く。
○ 一旦安全な場所に避難したら、警察(911)へ通報する。その際にどこで発生したかをまず初めに伝える。ビルの中であれば、必ずどの階にいるか(発生しているか)を伝えること。
(ロ)銃撃事案への対処方法
○ 銃撃事案に遭遇した場合、ABCの措置を取る。(米国土安全保障省の銃撃事案に遭遇した際の措置(Run、Hide、Fight)と同じ)
Avoid:逃げる
・逃げることができるのであれば,必ず外に逃げる
・隠れる場所を探さない
・エレベーターを使用しない
・持ち物は持って行かない
・警察官と遭遇した場合には,必ず両手を広げて挙げる(武器を持ってないことをアピールする)
Barricade:バリケード化
・部屋に隠れる場合には,必ず扉をロックし,机,テーブル,ファイルキャビネット等の家具でバリケード化する(できるだけ複数の机,テーブルを重ねて耐弾性を向上させる)
・室内の電気は消灯する
・携帯電話はマナーモードではなく,サイレントモードにする(状況によってテキスト、メール、ソーシャルメディアなどを使用することで警察や部外の人に何が起きているかを伝えられる)
・できる限り低い姿勢を保つ
Confront:対決する(注:こうすれば確実に助かるというものではない)
・積極的かつ迅速に反撃する(※犯人側は襲撃相手が抵抗することを想定しないため,反撃に出れば犯人側が躊躇する可能性がある)
・周りに複数の人がいる場合には,協力して制圧を試みる
・身の回りで反撃に利用できるものを武器にする(いす,はさみ,カッターなど)
(3)米国内の銃撃事案(active shooter)の特徴について
○ 米国内で発生している銃撃事件の多くは、精神的に問題のある者による犯行であることが多い。
○ 米国内の銃撃事件の場合、銃撃事件の犯行時間は平均で10~12分。
○ ニューヨーク市内のNYPDによる通報を受けてから現場に警察官が到着するまでの平均時間は3~5分。
○ 警察に通報がない限り、警察は現場に来ない。通報が遅ければ、警察が現場に到着した時にはすでに犯行が終了している場合がある。または、警察の到着を知って、犯人が自殺することもある。
○ NYPDで過去に発生した銃撃事件について分析したところ、これらの事件の犯人は97%が男性、98%が単独犯、64%が一つの銃器で犯行が敢行されていたことが判明した。しかし、9割以上の犯人が男性だからといって女性の犯人がいないわけではない。とりわけ2015年12月にカリフォルニア州サンバーナディーノでの銃乱射テロ事件においては、犯人夫婦の妻のほうが主犯であったとされている。よって、女性も十分に銃撃犯になりうる。また,犯人の年齢は12歳~88歳までと幅広く、相手が高齢者だからといって銃撃犯になり得ないと思わないほうがよい。
○ これまで銃撃事件では、拳銃1丁のみが使用されることが多かったが、最近は、ライフル銃(アサルト・ライフル)による犯行が増えている。ライフル銃は拳銃より多くの弾を装填できるため、より長時間銃撃することができ、犯行時間も長くなる。
○ また、戦術的にも精巧になっており、犯行直前の偵察活動や臨場した警察官への対策も行っている。
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総領事館からのお知らせ
(1)在留届・たびレジ
当館では,邦人が被害に遭った犯罪の実例情報,警察などが注意を呼びかけている犯罪などの情報,テロに関する情報などについて,当館ホームページや領事メールで在留邦人及び旅行者の皆様に提供している。領事メールは在留届けを提出している方に配信しているので,在留届の提出をお願いしたい。
また,大規模な事故や事件が発生した際の安否確認は,在留届の記載に基づいて行われるため,在留届を提出後,住所や電話番号等が変更したり帰国する場合は,速やかに当館への届出をお願いしたい。
「たびレジ」は,届け出ることによって,出張・旅行先で緊急事態が発生すると安全情報が現地の在外公館からメールで送られてきたり,安否確認の連絡を受けることができるので,日本からの旅行者だけでなく,ニューヨークの在留邦人が米国西海岸や米国外に出張・旅行で出かける場合にも届け出ていただきたい。
(2)ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル
外務省では,昨年7月のダッカ襲撃テロ事件を踏まえ,中堅・中小企業の安全対策の強化を重視し,「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」を制作した。外務省海外安全ホームページに掲載(全13話)されているので,皆様の安全対策の参考としてご活用いただきたい。
※http://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/golgo13xgaimusho.html