

NY州ウエストチェスター郡のインディアンポイント原子力発電所の場合
(1)放射線とは
光や電波と同じように、放射線もエネルギーの一つの形です。 よく似た言葉として「放射能」がありますが、これは放射線を出す能力のことです。私たちの身の回りのものの殆ど全て に−土や岩、川や海、私たちの食べ物、飲み物、そして私たちの体さえも− 放射線を出す放射性物質が含まれています。
放射線が人体に与える影響を表す単位としてミリレム(SI単位ではミリシーベルト、100ミリレム=1ミリシーベルト)があります。ハドソン・バレーの一般住民は、自然界及び人工資源から年間約360ミリレム、一日約1ミリレム浴びている (被ばくしている)計算になります。 (当館注:世界平均でみると、年間約240ミリレム浴びています。)自然界からの被ばくは、私たちが浴びている全 放射線の内、85%を占めています。残り15%は、煙探知器やカラーテレビ等の家電や、X線及び医療処置から 被ばくしているものです。原子力発電所が正常に稼動している場合、そこからの 放射線による被ばくはごくわずかです。インディアンポイント原子力発電所に最も近接した住民でも、原子力発電所から 出る放射線による被ばくは年間約1ミリレムです。
では、どれほど放射線に被ばくすると人体に害が出るのでしょうか?10万ミリレム以上の放射線を一日もしくは一日以下で 被ばくすれば、人体に悪影響を及ぼします。
州政府は、原子力発電所の通常業務により生じる周辺地域への放射線による被ばくを年間100ミリレム以下に抑えるよう定めています。米国環境保護庁(Enviromental Protection Agency)は、原発事故により1000ミリレム以上の放射線を地域住民が被ばくしないような対策を講じるよう 原子力事業者に求めています。
放射線対策
原子力発電所は、事故発生時に人体に害が出るほどの量の放射性物質漏れを防ぐよう設計され、多くの安全装置を有しています。 放射線レベルは、インディアンポイント原子力発電所内部及び外部にて常に観測されています。
事故が起きた時には、放射性物質は通常風速及び風向きに応じて広がります。専門家チームは原発周辺を詳細に測定します。滅多に起きる事はありませんが、住民が1000ミリレム、もしくはそれ以上の 放射線被ばくを受け又はそのおそれのあるような深刻な事態が起きれば、ニューヨーク州及び地方自治体が屋内待避や避難といった対策を講じるよう指示を出します。
放射線による被ばくを最小限に留めるための3つの重要要素である、時間、距離、遮蔽は、防護対策の基本要綱でもあります。
- 放射性物質の近くにいる時間が短ければ短いほど、人体への被ばくを低減させることになります。
- 放射性物質から遠ざかれば遠ざかるほど、人体への被ばくを低減させることになります。
- 重く密度の高い物質が、放射性物質との間を遮断していれば、それだけ人体への 被ばくを低減させることになります。
(2)緊急事態発生時の対応
(イ) 情報収集
緊急時に備えてのホットライン
緊急事態以外に関する質問や情報は、以下のトールフリー番号にお問い合わせください。
ウェストチェスター地区 | (800)942−1452 |
パトナム地区 | (800)942−1457 |
ロックランド地区 | (800)942−1450 |
耳の不自由な方専用ライン | (845)364−8946 |
オレンジ地区 | (800)942−7136 |
緊急事態の時のテレビ・ラジオ
緊急事態の時は、上記の番号に問い合わせるのではなく、以下のラジオ局の緊急情報を聞くようにしましょう。
AM局 | ||
WFAN-AM | 660 kHz | ニューヨーク |
WABC-AM | 770 kHz | ニューヨーク |
SCBS-AM | 880 kHz | ニューヨーク |
WRKL-AM | 910 kHz | パモナ |
WTBQ-AM | 1110 kHz | フロリダ |
WGNY-AM | 1200 kHz | ニューバーグ |
WFAS-AM | 1230 kHz | ホワイトプレイン |
WRCR-AM | 1200 kHz | ナニュエット |
WALL-AM | 1340 kHz | ミドルタウン |
WLNA-AM | 1420 kHz | ピークスキル |
FM局 | ||
WRRV-FM | 92.7 MHz | ミドルタウン |
WQXR-FM | 96.3 MHz | ニューヨーク |
WHUD-FM | 100.7 MHz | ピークスキル |
WGNY-FM | 103.1 MHz | ニューバーグ |
WFAS-FM | 103.9 MHz | ホワイトプレイン |
WAXB-FM | 105.5 MHz | マウントクスコ |
WZZN-FM | 106.3 MHz | ホースロー |
WXPS-FM | 107.1 MHz | |
TV局 | ||
WCBS-TV | CH2 TV | ニューヨーク |
WNBC-TV | CH4 TV | ニューヨーク |
WABC-TV | CH7 TV | ニューヨーク |
NEWS12 | CH12 CABLE | ウ ェストチェスター |
(ロ)地域内のサイレン
インディアンポイント原子力発電所で緊急事態が発生した場合、特別なサイレンが近くにお住まいの方に警戒を促します。このサイレンは、緊急情報を流すラジオ局のスイッチを入れるよう促すためのものです。同サイレンは、大きな高音で流され、火災時のサイレンと異なり、途切れずに3〜5分間流されます。
サイレンが届かない地域には、警察や、特別な警報用ラジオが緊急事態を住民に知らせます。サイレンが届かない地域の住民は、警報用ラジオの入手先を事前に通知されています。旅行者や周辺地域に詳しくない方の為には、公園や公共施設等に緊急事態発生時の対処法等が提示されています。船上の人々や、ハドソン川で釣りをしている方には、米国湾岸警備隊が緊急事態を通達します。
3〜5分間のサイレン、もしくは警察による警告を聞き次第、緊急情報を流すラジオ局に耳を傾けてください。上記のラジオ局は緊急事態の現状、対処方法等について情報を提供します。緊急事態解除のニュースが流れるまで、上記のラジオ局の情報に従うようにしてください。
3〜5分間のサイレンを聞いたら:
- 緊急情報を流すラジオ局のスイッチを入れましょう。
- 緊急情報が、屋内に留まるよう命じた時には、そのまま屋内及びオフィスに留まりましょう。
- 緊急情報が、避難を命じたときには、「避難」項目を参照して下さい。
- 助けを必要とする場合以外は、電話での問い合わせは避けましょう。電話の使用はラインの混雑につながります。
サイレンテスト
サイレンは1年に4回、きちんと起動しているか確認するためにテストされます。 高音・低音でのサイレンテストが年間二回、終日かけて行われます。テストの日時は、地方紙とラジオで事前に知らされます。
(ハ) 緊急計画区域と緊急対応区域、レセプションセンターと避難ルート
地方自治体及び州政府当局は、インディアンポイント原発から10マイル圏内の地域に対し、事故が起きた際住民を 放射能汚染から守り、また汚染を最小限に留めるための詳細な緊急事態対策マニュアルを作成しています。インディアンポイント原発から10マイル圏内の地域は、緊急計画区域(Emergency Planning Zone : EPZ)に指定されています。学区ごとにレセプションセンターが指定されており、学校や病院、老人ホーム等の特別施設への対応策も定められています。避難ルートなどの詳細は、こちらをご参照ください。
(ニ) 原子力発電所における緊急事態の種類
ニューヨーク州政府は、原子力発電所における緊急事態を4つの種類に分類しています。最も軽いものから、最も深刻なものまでの分類は以下の通りです。
- 異常事態(Unusual Event)とは、原子力発電所の運営に潜在的な問題があることを指しています。緊急事態担当者には事態が通告されますが、地域住民が対応する必要はありません。
- 警告(Alert)とは、原子力発電所の安全レベルが低下する事態を指していますが、地域住民が対応する必要がない状況を指しています。たとえ 放射能漏れがあったとしても、州政府の定めた放射能防護ガイドラインのわずかにしか達しません。
- 指定区域緊急事態(Site Area Emergency)とは、原子力発電所の安全レベルが著しく低下する事態を指しています。とはいえ、発電所外部への 放射能漏れは州政府の定めた放射能防護ガイドラインの域を越えない状況を指しています。
- 一般的緊急事態(General Emergency)とは、原子力発電所の安全装置に影響をきたし、原子力発電所外部に、州政府の定めた 放射能防護ガイドラインの域を越える放射性物質の放出が起こり得る状況を指しています。
(3)緊急事態対処法
(イ) 防護
緊急事態発生時に、危険から身を守るために物理的に防護体制を取ることは一つの防護策です。防護体制を取るように(つまり、屋内待避を)指示された場合、落ち着いて以下の行動を取りましょう:
- 緊急情報を流すラジオ局のスイッチを入れましょう。
- 家族とペットを屋内に入れましょう。
- 全ての窓とドアを閉めましょう。
- 換気扇、暖房、冷房等、換気装置を止めましょう。
- 暖炉の火を消し、熱が冷めたら換気弁(ダンパー)を閉じましょう。
- 助けを必要とする場合以外は、電話での問い合わせは避けましょう。電話の使用はラインの混雑につながります。
- 屋外に出ることは避けましょう。避難勧告が出された以外は、屋内に留まるほうが安全です。
(ロ) 避難
危険から身を守るために避難が必要な場合は、ラジオで避難勧告が流されます。これには、状況に応じた対処法も含まれます。避難勧告が出された場合、慎重かつ適切な行動を取るようにしてください。
- 落ち着いて行動しましょう。
- 噂やデマに耳を傾けないようにしましょう。ラジオの緊急情報や当局の指示に従いましょう。
- 電話での問い合わせは避けましょう。電話の使用はラインの混雑につながります。
- 3日間の避難を想定した上で必需品を揃えましょう:
- 洋服
- 毛布もしくは寝袋
- 処方箋
- 髭剃り機、石鹸、化粧品など
- ベビーフード等、子供や赤ちゃんに必要なもの
- 小切手、クレジットカード、重要書類、貴重品等
- 携帯ラジオ、懐中電灯、電池
- 緊急事態行動マニュアル、電話帳
- 車を所持していない知り合いを同乗させてあげましょう。
- 車の窓や通気口を閉めましょう。緊急避難エリアを出るまでは冷暖房をつけないようにしましょう。
- 所定の避難ルートに沿って避難しましょう。近道や裏道は閉鎖されている可能性があります。
- もし車を持っておらず、緊急情報が緊急特別バスが自宅エリアを迂回していると伝えた場合、近場の緊急特別バス停留所まで歩いていきましょう。緊急特別バスの停留所の情報はこちらを参照してください。
注!衛生と安全上の理由から、ペットを公共の避難所に連れ込むことは出来ません。ペットについてはご自身の車に置くか、もしくは避難所の外のペット用エリアが使用できる可能性があります。ペットフードやペット用品を携帯するようにしてください。
インディアンポイント原子力発電所の緊急事態には、レセプションセンター及び避難ルートが定められています。詳細は、こちらをご参照ください。
緊急計画区域(Emergency Planning Zone : EPZ)圏外の友人や親戚宅を頼る方は、レセプションセンターを待ち合わせ場所や伝言センターとして使用することが出来ます。 友人や親戚宅を頼れない方は、近場の集団ケアセンター(Congregate Care Center)という一時避難所が割り当てられます。 集団ケアセンターには、米国赤十字の専門スタッフが常駐し、食事、医療、通信、宿泊、衛生施設を提供します。 武器やアルコール、麻薬などの持ち込みは禁じられています。
緊急情報が、緊急事態の完全解除及び閉鎖解除を報じるまで、屋内に留まるよう、もしくは避難勧告が出されたエリアには立ち入らないようにしましょう。
(ハ) 学校の対策
全ての状況においてではありませんが、特定の緊急事態においては、学校は以下の行動を取るようにしましょう:
各郡の緊急事態担当者(county emergency officials)が、子供達を即下校させるほうが安全と判断した場合、学校は通常の早下校体制を取りましょう。
各郡の緊急事態担当者が、屋内に留まるほうが安全と判断した場合は、生徒及び学校職員は校内に留まり、指示が出るまで待機しましょう。
避難が必要な場合、生徒及び学校職員はスクールバスで緊急事態指定区域圏外の学校レセプションセンターに移動しましょう。学校名リストと各学校のレセプションセンターは、こちらを参照してください。
緊急事態発生時には、子供達の安全確保の為の対処方法に関する情報も流されます。
各郡の緊急事態担当者は、子供達の安全確保を非常に重視しています。避難が必要であれば、緊急事態発生後、即座に避難勧告が出され、安全、能率的に、速やかに避難が行われます。速やかに避難を行うためにも、ご両親は学校にではなく、指定の学校レセプションセンターに問い合わせてください。地方自治体の緊急事態担当者が指示した以外の行動をとると、避難活動を遅らせ、健康や安全、公共福利に害をきたすことになりかねません。
(ニ) 身体に障害のある方のために
身体的障害や妊娠、老齢により、自力で自宅からの避難が困難な方には特別な対応策が考案されています。
登録及び詳細はこちら。