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テロ関連情報
目次
爆弾テロ対策Q&A
生物化学核兵器への対策
炭素菌への対処
天然痘Q&A
天然痘ワクチン接種
こころのケアについて
天然痘Q&A
(米疾病対策センター(CDC)の情報)

一般的情報

天然痘について知っておくべきことはどんなことか?
天然痘は、急性伝染病である。時には人を死に至らせる病原体、バリオラ・ウイルス(variola virus)に感染すると、発熱と天然痘特有の進行性発疹の症状が現れる。天然痘ワクチンの接種計画が世界的に実施された1980年代、天然痘は撲滅したと発表された。しかし、2001年9月及び10月に起きたテロ事件後、連邦政府は、天然痘ウイルスが生物化学兵器として用いられるテロ攻撃に備える必要性を強調した。現時点で連邦政府は、 (1)もし、テロ攻撃があった場合、一般市民を対象に迅速に予防接種を行い、天然痘流行の阻止を目的とした具体的な対応計画を全米に設置した他(2)天然痘流行の場合には、必要な全ての人々のためのワクチンを十分準備している。
天然痘によるテロ攻撃は、どれほど深刻なのか?
米政府は、天然痘ウィルスが生物化学兵器によるテロ攻撃として意図的に使用され、市民に流行する可能性に対し、警戒している。
天然痘はどれだけ危険なのか?
米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention)は、天然痘をカタゴリーAに分類している。カテゴリーAは、公共衛生に最も危害を及ぼすもので、広範囲に渡り感染する可能性が高いため、市民が最も注意し緊急時に備える必要がある病原体である。その他カテゴリーAに含まれるのは、炭疽菌、ペスト菌、ポツリヌス中毒症、野兎病、ウイルス性出血熱等である。
天然痘感染が心配であれば、病院でワクチン接種を受けられるのか?
現在では、一般市民に対するワクチンは提供されていない。しかし天然痘が流行した際には、必要な全ての人々のために十分なワクチンが用意されている。

病状について

天然痘の症状は?
天然痘に感染すると、発熱、頭痛や体の痛み、時には嘔吐といった症状を経て、徐々に広がる発疹に発展する。発疹は、少し盛り上がった丘疹から水疱ができ、膿疱になる。皮が硬くなり、カサブタとなったものは、二、三週間後に落ち、あばたが残る。
天然痘に感染した場合、症状はいつ現れるのか?
天然痘に感染すると7〜17日後に症状が現れる(病原体の平均潜伏期間は12〜14日間)。この間、感染者は、特に体に変化を感じない他、ウイルスが他者に感染することはない。
天然痘は不治の病なのか?
天然痘患者の大半は、回復している。しかし、30%の確率で死亡する場合もある。回復した患者にはあばたが体、時には顔に一生残る他、失明したまま治らない場合もある。
天然痘はどのように感染するのか?
天然痘は通常、感染者との接触により感染する。一般に、長時間に直接接触することで、感染し、また感染者の体液に直接触れたり、ベッドや衣服など感染者の体液が付着したものに触れることでも感染する。間接的感染は稀である。ビルやバス、電車など密閉された空間でウイルスが空気感染することもあまりない。虫や動物を媒介として感染することもない。
もし天然痘が噴霧されれば、ウイルスはどのくらい生存するのか?
天然痘ウイルスは脆弱であり、実験では噴霧されたウイルスのうち90%は24時間以内に死ぬ。紫外線下の状態では更に多くのウイルスが死ぬ。
感染者が何人くらいいれば、天然痘が流行したと言えるのか?
感染者が一人見つかれば、それはすでに公衆衛生上の緊急事態と言える。
症状が出るまでに、既に天然痘は感染性を持っているのか?
患者は発熱の症状が出始めると、感染性を持っている場合もあるが、発疹の症状が出ると最も感染性がある。最後のかさぶたが無くなるまで、患者は感染性がある。
 
天然痘の治療法はあるのか?
天然痘はワクチンで防御できる。確立された治療法は無いが、抗ウイルス薬の研究は進んでおり、動物を利用した研究も行なわれている。輸液や解熱剤、痛み止めの薬などが症状を和らげ、二次感染を防ぐため抗生物質を用いることがある。

ワクチンについて

天然痘ワクチンとは何か?まだ接種する必要があるのか?
ワクチンは天然痘を防御する唯一の方法である。ワクチンは体内に天然痘への抗体を作る。ワクチン接種により天然痘は人間社会から撲滅された。
 米国での定期的ワクチン接種は、天然痘が米国から撲滅された後、1972年に中止された。最近まで、米国政府は天然痘ワクチンを数百名の科学者及び医療関係者のみに研究用として提供してきた。しかし2001年9月11日のテロ事件以降、米国政府はテロ対策を強化させ、天然痘発生時の対応計画や、米国市民のためのワクチン生産を命じた。天然痘発生の際に はワクチン接種が必要な全ての人々のために、十分な量のワクチンがある。
ワクチンを接種すべきか?
現在、一般市民のためのワクチンは提供されていない。
ワクチンはどのように提供されるのか?
天然痘ワクチンは他の予防接種のように注射されるのではなく、二股注射針でワクチン溶液を数秒間にわたって皮膚に数回刺す。注射後は、皮膚にひりひりした跡ができる。ワクチンは通常、上腕部に接種される。
 ワクチン接種が成功すると、その後3〜4日間は赤くてかゆい隆起部ができる。接種後1週目に、隆起部は大きくふくれ、うみができるが、その後うみは出てしまう。2週目にはふくれは乾き、かさぶたができる。3週目にはかさぶたはとれ、小さな跡が残る。初めてワクチンを接種する人は、2回目以降の人よりも反応が大きいかもしれない。
なぜ現在は、天然痘ワクチンは接種しなくてもよいのか?
米国での天然痘の最終症例は1949年であり、世界では1977年にソマリアで最後の症例が見つかっている。天然痘撲滅以降、一般市民に対する定期的なワクチン接種は中止された。
もし天然痘に暴露したら、それからワクチンを接種しても手遅れなのか?
暴露後 3日以内にワクチンを接種すれば、完全に抑制できるか、もしくは多くの場合には症状が緩和される。暴露後4〜7日以内のワクチン接種では、部分的に抑制されるか、症状がひどくなるのを防ぐことができるかもしれない。
ワクチン の効力はどのくらい維持されるか?
過去の症例によれば、最初のワクチン接種で3〜5年間は防御されるが、その後、免疫力は低下する。再度ワクチン接種を受ければ、免疫力は長く維持される。
薄められたワクチンを接種しても、効果はあるか?
最近の実験では、薄められたワクチンの接種でも、十分な免疫力を提供する効果があるとされている。

牛痘(vaccinia)について

天然痘ワクチンは何からできているのか?
ワクチンはvacciniaというウイルスからできており、天然痘を引き起こさないほうそう型のウイルスである。天然痘ワクチンは、体に天然痘に対する免疫をつくる。ワクチンは天然痘ウイルスを含んでおらず、天然痘を感染させることはない。
ワクチンによって天然痘にかかることがあるのか?
ない。天然痘ワクチンは天然痘ウイルスを含んでおらず、天然痘を感染させたり、天然痘を広めたりするものではない。しかし、ワクチンはvacciniaという別の型のウイルスを含んでおり、ウイルスは生きているため、接種部とは異なる体の部分や、他の人の体にまき散ることはある。手洗いや使用済み包帯を注意深く処理し、ワクチン接種部を適切に処置する必要がある。
ワクチン接種を受けた人から、ワクチンのウイルスが移ることがあるか?
ある。ワクチン接種部に接触したり、使用済み包帯に触れると、ワクチンのウィルスは移る。ワクチン・ウイルスは空気感染はしないが、発疹や発熱、頭痛や体の痛みを引き起こすことがある。

ワクチンの安全性について

天然痘ワクチンはどの程度安全か?
天然痘ワクチンは、天然痘ウィルスに曝された場合の最善の防護策である。多くの者は、(ワクチンの接種後、)通常、腕の不快感、発熱、身体の痛み等の軽い反応を経験する。最近の試験では、接種された者の3人に一人が、接種後、会社の欠勤、学校の欠席、余暇活動の中止をする程度に具合が悪くなるか、睡眠障害を起こしている。更にワクチンには危険が伴っている。過去、初めてワクチンを接種された100万人の内約1000人は、生命に危険を及ぼすものではないにせよ 重い副作用を経験している。これらの反応には、(中毒又はアレルギー的な)強い反応がワクチン接種部で発生することや「バクチナ・ウイルス」(vaccina virus:天然痘ワクチンの中の生ウイルス)の体の他の部分又は他人への感染などである。稀に、ワクチン接種された者がワクチンによる重い副作用を経験することがある。過去、被接種者100万人中14〜52人が潜在的に生命に危険を及ぼしうる反応(ワクチン性湿疹、進行バクチナ、進行性脳炎等)を経験している。過去の経験に基づけば、被接種者100万人のうち、1〜2名が生命に危険を及ぼすワクチン反応により死亡することが見込まれる。ワクチン被接種者を注意深くふるい分けることがより危険の多い者にワクチンを接種されないことを確実にするために重要である。
 ワクチン接種により最も副作用を起こしやすい者は、皮膚に異常(湿疹又はアトピー性皮膚炎等)を有しているか、かつて有していた者、臓器移植、HIV陽性、ガン治療中等の理由により弱体化した免疫システムを持っている者である。この種類に属する者及びそれらの者と同居している者は、天然痘に曝されていない限り、ワクチンを接種されるべきではない。妊婦は、胎児にもたらす危険から、ワクチン接種を受けるべきではない。12ヶ月に満たない子供はワクチン接種を受けるべきではない。更に、18歳に満たない子供に対する天然痘ワクチンの緊急性のない接種に対して、「予防接種に関する諮問委員会(Adivisory Committee on Immunization Practices: ACIP)」は反対している。
ワクチン接種を受けるべきでない者とは?
ワクチン接種を受けるべきでない者とは、以下の通りである。即ち、ワクチン又はワクチンの成分のいずれかにアレルギー反応を示す者、妊婦、哺乳をしている女性、生後12ヶ月未満の者、皮膚に異常(湿疹又はアトピー性皮膚炎等)を有しているか、かつて有していた者、 弱体化した免疫システムを持っている者(臓器移植、HIV陽性、ガン治療中等又は免疫システムを押さえるステロイド等の投薬治療による)である。(18歳に満たない子供に対する天然痘ワクチンの緊急性のない接種に対して、「予防接種に関する諮問委員会(Adivisory Committee on Immunization Practices: ACIP)」は反対している。)これらの者は、天然痘の曝されていない限り、ワクチン接種を受けるべきではない。
免疫システムが弱まっている場合、天然痘ワクチンの接種を受けるべきだろうか?
受けるべきでない。天然痘患者が発生して、ウイルスに直接曝されていない限り、ワクチンの接種を受けるべきではない。ワクチン接種により、弱体化した免疫システムを持つ者は死亡することがある。よって、天然痘に直接曝されない限り、天然痘ワクチンの接種に関連する危険を冒す必要はない。その場合でも、医師又は健康管理関係者と相談すべきである。
妊婦はワクチン接種すべきでないとされる。広範囲におけるワクチン接種が実施され、接種された者との接触する可能性が増えた場合、妊婦(又は生まれる前の子供)に対する危険はあるのか?
胎児に対する危険があるため、妊婦は、天然痘患者の発生していない限り、ワクチン接種を受けるべきではない。 妊婦がバクチナ・ウイルスによって感染しても、胎児は危険にさらされうる。ワクチンを接種された者は、妊婦又はその他の者に対してバクチナ・ウイルスを感染させないように十分留意しなくてはならない。
ワクチンによる副作用に対する治療の方法はあるのか?
二つの治療方法によって、天然痘ワクチンによる副作用を示した人を助けることが可能である。それは、ワクチナ免疫グロブリン(Vaccina Immune Globulin:VIG)及びcidofovirである。2002年12月末までに、2700人用以上のVIG(2700万人以上にワクチンを接種した際に予想される事態に対応)及び3500人用のcidofovirが用意されている。追加的なVIG治療薬が現在製造中であり、また、cidofovirの供給量を増やすための措置が取られている。VIG及びcidofovirは、新薬治験規約に従って投与されることになる。
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