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ジャムズネット「NYに滞在する邦人家族と子供の問題」情報交換会報告

2008年9月2日

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  • 日時:2008年8月12日(火曜日)
  • 場所:在ニューヨーク総領事館領事待合室
  • 参加者:26名

ジャムズネットの主催で標記情報交換会が開催された。

当会は、日本赤十字看護大学の筒井真優美教授(小児看護学)が日本から当地に来訪している機会をとらえ、JAMSNETに参加しているニューヨークで子育て支援の取り組みを行っている団体や医療関係者と共に、米国と日本の子育てと、その家族が抱える問題と現状について情報を交換し、今後の子供と家族への支援のあり方について役立てることを目的として開催された。

筒井教授の講演を基に、8人のパネラーの話題提供に関して、話し合いを進めていくパネル・ディスカッション形式で情報交換会を進行した。

はじめに、筒井教授から「日本における子どもと家族の看護の現状と課題」と題して講演がなされた。内容は、?@最近の、高齢少子化といった社会構造の変化から家族構造の変化、それに伴う親子関係の変化と親や子どもの行動変容について。?Aそれによる小児医療の現状と問題点について詳細なアンケート結果と豊富な経験を基にした考察がなされ、今後の小児看護に対する提言。及び、?B様々な社会や医療変化に合わせた看護を含めた医療提供者側の制度面を含めた多角的な変化が求められていることが骨子であった。

上記、講演に対し以下8名のパネラーによる話題提供がなされた。(敬称略・発表順)

?@ 野田美知代:日系人会事務局長
子育てに関する自らのネットワーク作りの経験を元に、親子関係の大切さは当然のこととして、親同士の親睦とコミュニティーの重要性について。
?A 森真佐子:Japan Education Center, Clinical Psychologist
自らが相談にのってきた事例を元に、コミュニケーションと適応の問題について。
?B 窪田絵里:心臓移植者支援(Heart to Heart)
心臓移植のために渡米した子ども及びその家族の支援に携わる中、経験した日本と米国の医療慣習や制度上の相違から生まれる問題点について。
?C 加納麻紀:Japanese Medical Practice、医師(小児科、内科)
アメリカで育った経験、自らの子育てと、小児科医師としての経験からアメリカでの育児について。また、育児支援サポートグループ「すくすく会」の活動について。
?D 佐々木奈央:Mount Sinai Medical Center, 小児循環器専門医
帰国子女としての自らの経験と日本、米国、両国の医療事情を知る医師の立場から、予防接種をはじめとした日米の保健制度の違い、医療制度や医療文化の違いの観点から、子育て支援のあり方について。
?E Nora Kohri:Care the World, 海外出産育児コンサルタント、ソーシャルワーカー)
医師・患者関係、情報開示のことなど、日米の医療文化の相違から生じるトラブルや育児面での問題点などについて。
?F 羽田今日子:育児支援NYすくすく会、ソーシャルワーカー
育児支援グループでの取り組み。また、米国で取り入れられている発達障害児に対する早期介入プログラムについて。
?G 竹永浩之:アップルキッズ
アップルキッズで、長年NYに滞在する邦人の育児グループに携わってきた経験から、最近の日本人に見られる行動変容や親子関係、人間関係の構築のしかたの変化について指摘がなされ、情報環境の変化から支援のニーズも変わり、それに応じた支援の柔軟性が重要であることの説明がなされた。

パネラーの報告を踏まえて、日米の医療環境の違いと両国で育児をすることの現状と問題点について、筒井教授、パネラー、会場の参加者を含め、活発な情報交換が行われた。要旨は以下のとおり。

育児において、社会(コミュニティー)や家族の関りの重要性は、国に関らず価値観を共有する。米国に滞在する日本人にとって、親、特に母親の社会への適応の問題が、育児に影響を与えることが再確認された。そのため、育児支援が必要となるが、本邦での親世代がそうであるように、米国に滞在する邦人の親世代にも、社会との関係構築や家庭生活の中でも行動変容がみられ、育児支援のあり方にも変化が求められている。また、日米間には、医療制度や医療文化の違いがあり、育児環境に少なからず影響を与えている。なかでも、発達障害児やその家族に対する、社会や医療の対応に関しても相違がみられ、日本ではその環境づくりが急がれる。

社会の変化に伴う、異文化間の精神衛生と母子保健(乳幼児精神衛生、周産期精神衛生)について、国際的な視野での理解と勉強が子育て支援のグループにも必要である。日本と海外を対象にした周産期母子衛生保健関係者のネットワーク作りと異文化間での子育てに関する勉強会を定期的に持てるような組織を期待したい。(Parenting Educator, Early Childhood intervention, Therapist, Psychologist, Psychiatrist, Doctor, Nurse, etc の人々が協力出来るような組織) 

ニューヨークで乳幼児期を過ごす日本の子供達は、将来、日米の架け橋となる存在となる。その子供達、家族に対する育児支援は国際的な人材育成という観点からも、日本国、日系企業にとっても重要かつ有益であると考える。

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