ヘルスウィークにおける「骨粗鬆症について」講演会
2008年6月25日
- 1.日時:5月22日13時00分〜13時30分
- 2.講師:木村啓子医師
- 東京海上記念診療所医師
- 3.概要
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骨粗鬆症とは、文字通り「粗でスカスカの骨」を意味し、進行性に骨量を損失していく病気です。骨粗鬆症になると、身長が低くなり、えびのように曲がった背中のコブを生じます。骨折の危険度が増していきます 多くの場合、骨折が起こるまでは、不快感も症状もあらわれず、長年にわたって 進行していきます65歳以上の年齢なら、女性では2人のうち1人が、男性では5人のうち1人が、骨粗鬆症のために骨折をおこしています。
転倒・転落・骨折(股関節部、脊柱、手首、腕、 脚の骨折)
単純な家庭の日常作業でさえ、骨の疾患によって弱くなっていると、骨折を引き起こします。 最も重大で衰弱させる骨粗鬆症による骨折は股関節部の骨折です。大部分の股関節部骨折患者は、それまでは独立・自立して生きてきたのに、家族やホームケアの援助を必要とするようになります。全ての股関節部骨折患者は、数ヶ月の間、リハビリ、歩行器を必要とします。ほぼ半分の人たちは、住宅内や屋外を動き回るために、永久的に杖や歩行器を必要とします。
骨粗鬆症の予防
- カルシウムとビタミンD
- 加齢によるゆるやかな骨損失を防止することはできませんが、骨の質を維持するためには、重要な役割を果たし続けます。すでに骨粗鬆症になっていたとしても、カルシウムとビタミンDの摂取量を増加させると、骨折のリスクを減少させることができます。
- カルシウム
- カルシウム摂取基準量
- 50歳以上の女性と男性には、1日1200-1500mg 食事、乳製品、豆製品、緑黄色野菜、小魚、海藻、サプリメント Calcium carbonate, calcium citrate(TUMS, Os-Cal, Caltrateなど)
- ビタミンD
- 身体がカルシウムを吸収するのを手助けします 51歳から70歳は、毎日400 IU、71歳からは、毎日600IU
骨粗鬆症の予防-運動
運動は筋肉と骨を強く維持し、骨損失を最小限にさせます。規則的な運動プログラム(1週間に3から4回)。歩く、ジョギング、ハイキング、階段を登ること、ダンス、トレッドミル運動、重量挙げのような荷重運動。バランス感覚を訓練させ、転倒・転落防止に有効です。転倒・転落が、骨折の50パーセントを占めますので、転倒・転落を避けることで、骨折を防止することができます。どのような運動プログラムでも、開始する前に、主治医に相談して下さい。
診断
- DEXA Bone density scan
- 骨密度の測定は、安全な、痛くないX線を使った技術です。骨密度を、年齢が20〜25歳頃の骨密度が一番高い時期のデータと比較します。
- T−score (World Health Organization)
- T score > 1.0 Normal bone mass
- T score -1.0 to -2.5 Low bone mass
- T score < -2.5 Osteoporosis
治療(薬剤)
- Bisphosphonates
- 顕著に骨量を増加させ、脊柱と股関節部の骨折を予防する。
- Alendronate (Fosamax)
- Risedronate (Actonel)
- 副作用:吐き気、胸焼け、胃痛。食前にたくさんのお水と服用し、30分は横になってはいけません。錠剤は1日1回、1週間1回、1ヶ月1回など
- SERM
- Raloxifene (Evista)
- 選択性エストロゲン受容体調節薬SERMsエストロゲン剤。骨量を増加させ、脊柱の骨折リスクを減少させます。乳癌の危険度を下げるようです
- 副作用:ほてり、血栓症のリスクを高める。
- Estrogen
- エストロゲン代償療法(ERT)は更年期の時期からはじめることが多い。更年期の症状に効果あり。骨量減少を防止する。背骨と股関節の骨折リスクを減らす。ホルモンはまた皮膚や女性器官の老化現象の予防、コレストロール数値と排尿機能を向上させます。
- 副作用:血栓症、乳ガンのリスクが増加する。
- テリパラタイド
- Teriparatide (Forteo)
- 上皮小体のホルモン。骨量を増加させる。毎日1回 ふとももか腹部に注射。一応2年間の使用に限られています。
- 副作用:吐き気、めまい、足がつる。
- カルシトニン
- Calcitonin (Miacalacin)
- 甲状腺のホルモン。骨損失を減少させる。背骨の骨折を予防する。痛み止めの効果があるかもしれない。鼻のスプレー〈アメリカ)、日本では注射。効果が強くないので、他の薬を飲めない人にあげます。
- 副作用:薬物反応、吐き気、下痢、鼻炎
姿勢
頭をまっすぐ、あごをひいて、背筋をそらす。座っているとき・運転しているときは サポートを使う〈タオルでもよい)。何かを床から持ちあげる時は、足を使って、ひざを曲げて、持つ。かがまないようにする。
転倒の予防
- 靴、低いヒール。スニーカーみたいなのがベスト。
- コードにつまずかないようにテープなどで固定する。
- ラッグ・マット、すべらにように固定する、または捨てる。
- 明るい照明 - 特に足元がよく見えるように、足元灯など。
- 手すり(Grab bars)をつける。トイレ、階段、玄関
関節の痛み
- 関節炎。
- 慢性的に痛みがある。痛いのをがまんすると、関節を動かさなくなり、余計痛みが増すことがあります。
- 痛み止めの薬
- 理学的療法 (physical therapy)
- 主治医と相談してください
日常生活での注意
煙草をやめる。炭酸飲料をひかえる。酒をひかえる。