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ヘルスウィークにおける「Healthy Relationship」講演会

2008年6月25日

1.日時:5月24日17時00分〜18時30分
2.講師:
永尾香織、M. A.、ATR(New York Asian Women’s Center)
沢田美希子、LMSW、MPA(Sanctuary for Families)
3.概要
Healthy Relationship とは?
~ ドメスティック・バイオレンスについて考える ~

『言葉は耳にしたことがあるけど、一体ドメスティック・バイオレンスって何なの?』

日本のメディアでも昨今、「ドメスティック・バイオレンス」という言葉が盛んに新聞やニュースの見出しを飾るようになってきました。日本ではこれまでドメスティック・バイオレンスは「家庭内暴力」と訳され、子どもから親を、もしくは親が子を虐待する行為を主に指す言葉として用いられてきた感があります。また、「ドメスティック・バイオレンスは各個人・家庭の問題である」などといった誤った認識があり、身近な社会問題であるにも係わらず、公の場で取り上げられる機会が乏しかったように思います。

この講演では、「ドメスティック・バイオレンス(DV)とは何なのか」という定義から始まり、統計から知るDV、DVの種類、DVのパターンとサイクル、加害者の特徴、被害者への影響、DVへの対処法、DV被害者を取り巻く支援団体とその支援サービについて、ニューヨーク市のドメスティック・バイオレンス支援団体に勤務する2名の邦人カウンセラーが実際のケース事例を交えながら詳しく解説いたしました。以下、講演内容から一部抜粋しての記載になります。

DVのパターンとサイクル

DVは暴力行為や威嚇・脅迫を通して、一方が他方に恐怖感を植え付け、相手の行動や意思を思いのままにコントロールする一連のパターンと行為を指します。DVは婚姻関係を問わず、現在もしくは過去に親密な関係にあったパートナーおよび親子間に起こります。加害者は被害者に対して絶対的な力とコントロールを得るために、規則的な虐待のパターンとサイクルを繰り返す傾向にあります。

緊張期:
加害者の苛立ちが高まり、被害者への非難的態度が増し口論が絶えなくなる
暴力期:
加害者の抑えていた感情が様々な攻撃的行為として被害者へ向けられる。身体的暴力に限らず、性的、言語的、精神的、経済的な暴力行為も相当する。
ハネムーン期:
暴力期から一転、何事もなかったかのように振舞い、優しくなる。暴力を飲酒やドラッグのせいにしたり、二度と同じようなことは起こらないと約束する。それと併せて、花束やプレゼントを買って帰宅するなどの行動が見られるようになる。

これら3つの段階はサイクルとして循環するため、ハネムーン期に続いて関係は再び緊張期に入ります。それぞれの段階への移行期間は次第に短くなり、それに伴いDVの程度も深刻化すると言われています。

DVはパワー&コントロール

DVは大別すると、身体的暴力(髪をひっぱる、蹴る、殴るなど)、言葉の暴力(無能、売女、などと罵倒)、性的虐待(セックスの強要、避妊具を使用しない危険な性交渉)、そして精神的虐待とがあります。精神的虐待は見落とされることが多く、専門機関に問い合わせて初めて気づくという被害者が多いのが現実です。以下は全て精神的虐待とみなされます。

  • 脅迫・威圧=物を壊す、武器をちらつかせる、または自殺すると言って脅す。子どもや親族、ペットを傷つけると脅す。架空の事件をでっちあげ、警察などに被害者を訴える。
  • 社会からの隔離=外出先・外出相手・外出時間などを細かく監視し、電話、Eメール、手紙などを許可なく勝手にチェックする。
  • 責任転嫁・過小化・否定=加害者に悔恨の意識が欠如しており、DVの事実を過小化または否定する。言い訳が上手く、DVの理由を飲酒や薬物、他人のせいにし、反省の色を示さない。被害者がDVを誘発していると責任転嫁をする。
  • 移民ステータス=「永住権を目当てに結婚した」となじる、もしくは「永住権をサポートしない」「移民局に通報する」となどと脅す。
  • 経済的虐待=貯金や収入へのアクセスを制限、もしくは断つ。生活費や買い物に許可を必要とし、就職することに反対して被害者の経済的自立を阻止する。

DVに遭っているときづいたら

「ドメスティック・バイオレンスはれっきとした犯罪行為です」
身の危険を感じた場合は迷わず911に連絡してください。

DV被害者専門団体は、緊急シェルター、カウンセリング、法的支援(裁判所への付き添い)、生活保護申請、こどもたち向けのプログラム(カウンセリング含む)などを提供しています。クライアント毎にケースワーカーやカウンセラーがつき、自立に向けて総合的なお手伝いをいたします。提供されるサービスは一切無料ですので、費用負担の心配なく、どなたも支援を受けることが可能です。ご自身の状況がDVなのか判断がつきかねたときには是非一度DV支援団体へ連絡をとることをお勧めいたします。

DV被害者を支援する団体はアメリカ全土に存在します。この講演の講演者の勤めるNew York Asian Women’s CenterやSanctuary for Familiesをはじめ、Safe HorizonやMayor’s office to combat DVなど、NY市には多数の被害者支援団体がしています。

DVは各家庭の問題ではなく、深刻な社会問題です。一人一人がDVへの正しい理解や認識をもつことで、現在支援を求めずに苦しんでいる多くの被害者が救われます。ご自身が被害に遭っている場合に限らず、被害に遭っていると疑われるお友達やご家族がいらっしゃったら、是非これらのDV支援団体への橋渡しをしてください。

沈黙を破る。それが第一歩です。

 

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