| English

救命救急講習会(概要) (2008年9月17日)

2008年12月15日

会場の様子

日時:
9月17日(水)18時〜20時
講師:
武井康悦医師(コロンビア大学プレスビテリアン病院、循環器内科)

概要

(A)内因性の突然死の数は米国では毎年40万人、日本でも5万人以上と言われ、今後高齢者人口の増加に伴い、増えると予想されている。ドリンカーの生存曲線と呼ばれる物があるが、これによれば、呼吸停止後、分きざみで生存率が下がり、7ー8分でほとんど0に近くなる。ちなみに日本で救急車到着までの平均時間は6.5分と言われており、ほとんどのケースが間に合わない事になり、救急隊が到着するまでの処置の重要性が指摘されている。

(B)救命の連鎖は4つの輪で成り立っていて、成人の場合、1.迅速な通報、2.迅速な心肺蘇生、3.迅速な除細動、4.二次救命処置である。小児、乳児の場合は、1.適切な予防、2.迅速な心肺蘇生、3.迅速な通報、4.二次救命処置となっており、最初の3つはいずれも現場にいる人が行う必要がある。

(C)突然死の多くを占める心室細動は、電気的除細動処置が最も効果的な治療である。この処置を行う自動体外式除細動器(AED)は日本でも爆発的に普及し、病院、老人ホーム、学校、空港、競技場、ホテルなどに設置されている。AEDの普及により救命率が上昇したとのデータもあるが、上昇が認められなかったとする報告もあり、AEDの前、できるだけ早期から十分な強さと十分な回数の胸骨圧迫(心臓マッサージ)が絶え間なく行われる事が重要、と2005年の国際コンセンサスで見直しが行われた。

(D)小児、乳児の心肺停止の特徴として、1.大部分は親、シッター、保育士などの監視下で発生している。2.原因の大部分は進行性呼吸不全とショックである。3.心臓が原因である事は稀。4.ほとんどは低酸素、高炭酸ガスの血液状況となり、徐脈となり心停止となっている。などが挙げられる。

(E)心停止の原因としては、1.外傷(約50%)、2.溺水、3.熱傷、4.窒息、5.中毒などの順となっている。咳、鳴き声、手足の動きなどの反応がない乳児、小児の場合の処置の手順は、1.乳児・小児を硬い平面にのせる、2.呼吸、循環の確認、3.救助者が二人の場合救急車を呼ぶ、4.一人は気道を確保し口腔内異物を確認、5.心肺蘇生、6.救助者が一人の場合4.5を5サイクル行ってから救急車を呼ぶ、となる。

(F)実際の手順

  1. 反応を見る。強く体をゆらさない。反応がなければ協力者に救急車要請をしてもらい、自らは心肺蘇生を開始する。
  2. 応援要請。人を呼ぶ、911に連絡を依頼する。AEDを持ってくるように頼む。
  3. 気道確保。頭部の後屈、顎の挙上。
  4. 呼吸確認と人工呼吸。Look:胸郭の上がりを見る。Listen:息・咳を聞く。Feel:息を感じる。
  5. 脈拍確認。小児の場合は、脇の下、そけい部を触れて確認。
  6. 胸骨圧迫。脈拍が無い、あるいは1分間に60以下の徐脈の時に行う。脈拍がはっきりしなくとも、意識、呼吸がないときは速やかに胸骨圧迫を行う。胸の真ん中、両乳頭を結んだ線の真ん中胸骨上を胸の厚さの1/3から1/2の深さまで。最低でも1分間に100回。
  7. 胸骨圧迫+人工呼吸。一人だけで行う場合、胸骨圧迫と人工呼吸は同期して交互に30対2の割合で継続。小児・乳児で二人以上を行う場合は15対2の割合で継続。
  8. AED装着。AEDは届き次第すぐに装着。電源を入れ、パット装着。1歳未満はAEDは使用しない。
  9. AED実施。解析開始し音声の指示に従って除細動。小児は小児用パットで。
  10. 胸骨圧迫再開。除細動実施後すぐに胸骨圧迫を再開する。2分後にAEDが再解析を開始。
  11. 胸骨圧迫交代。疲れてきたら、5秒以内で交代する。
  12. 再開したら回復体位にする。
  13. 引き継ぎ。MIST。Mechanism:受傷・発症機転。Injury:受傷部位・主訴。Sign:症候・症状。Treatment:処置について引き継ぎする。

(G)窒息について。

軽度の場合には、咳を促す。重傷であれば救急車を呼び、気道を確保してHeimlich法を試みる。万国共通の窒息サイン(手を首にあてる)に注意する。乳児の場合には内臓損傷の危険がありHeimlich法は行わない。Heimlich法は、1.背部に回り、(子供の場合片膝をついて)傷病者の胸に両腕をまきつける、2.片手で握りこぶしを作る、3.握り拳の手の親指側をみぞおちの近くにおく、4.握りこぶしをもう片方の手でつかみ、すばやく腹部を突き上げる、5.異物が排出されるまで、実施する、といった手順である。

乳児の場合の窒息解除法。

背部叩打法:
片膝をつく、片手で頭部と下あごを保持する(首を圧迫しない、親指と人差し指であごを保持)、強く背中を5回叩く(1秒に1回)。
胸部突き上げ法:
片膝をつく、ひっくり返して後頭部を保持する。両乳頭の中間のすぐ下で胸部突き上げを5回行う(1秒に1回)

続いて、乳児の人形を使っての、ガイドラインに沿った心肺蘇生法の実習が行われた。

フォトギャラリー

 

(c) Consulate-General of Japan in New York
299 Park Avenue 18th Floor, New York, NY 10171
Tel: (212)371-8222
著作権・リンク・免責事項