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「ピンピンした生活を続けるための小技集」講演会 (2008年9月21日)

2008年12月15日

会場の様子

日時:
9月21日16時00分〜18時00分
講師:
桑間雄一郎医師 、木村啓子医師
東京海上記念診療所

概要

高齢者における主な健康問題を下記の項目について総復習した。

1. 発熱と感染症 - 桑間

高齢者の感染症は、発熱がはっきりしなかったり、変なことを話すなどの急性のボケ症状を呈したり、若年者と違った症状ではじまることがあるので注意が必要。肺炎、膀胱炎、床ずれの感染症などが高齢者では多い。感染症になる危険を少しでも減らすために、肺炎予防注射やインフルエンザ予防注射をうけるべき。

2. 圧迫潰瘍(じょくそう)- 桑間

寝返りを打つことができずに、同じ姿勢で寝ていると、骨の出っ張りの部分を覆う皮膚に、圧迫潰瘍(じょくそう)ができる。なるべく頻繁に体位を変えることが必要。

3. 失禁 - 桑間

主な尿漏れの原因は下記の3つ。

腹圧性尿失禁 
 笑ったりくしゃみをして、お腹に圧力が生じたときに、少量の尿を漏らしてしまうタイプ。だれにでもできる治療で、まず試みるのは、ケーゲル運動(骨盤底筋群のトレーニング)。 肛門を6から8秒力を入れて閉めることを10回行う。これを一度に3セット。これを週に3回。
切迫性尿失禁
尿意を感じたら、がまんが効かずに、すぐに大量の排尿をしてしまうタイプ。まず試みる治療法は、膀胱訓練(いきたくなったら、落ち着いて立ち止まるか座り、尿意のピークの過ぎ去るのを、ゆっくり深呼吸して待つ。尿意のピークが過ぎたら、トイレにゆっくりと行って排尿)。膀胱の過敏性をとる薬の内服も時に有効。
漏流性尿失禁
男性の前立腺肥大の場合におおく、尿道が閉塞していて、膀胱が大量の尿で満ち溢れ、少量の尿が押し出されてくるタイプ。尿道をリラックスさせて排尿を促す薬剤の投与や前立腺肥大の手術が治療法。

4. 痴呆、譫妄(せんもう)、うつ - 木村 

うつについての話が中心でした。友達や家族と会うように心がけ、ボランテイアなどをして、毎日を楽しむことが大切。笑いが最高の薬。笑うことは体操になる。顔と体の筋肉をストレッチするし、脈拍と循環がよくなり、呼吸が速くなり、酸素が体内に広がり、免疫が上がり、血糖値が下がり、痛みが軽くなるなど、いいことづくめ。

5. 転倒とその予防 - 木村

毎日飲んでいる薬を主治医と相談し、転倒の危険を高める眠り薬や過度の高血圧薬を吟味する。

毎日体を動かし、歩き, 足腰をきたえる。Tai chiは大変よい。適度の運動の分野にはいり、最大酸素摂取量 の55%程度で、心臓・肺の機能がよくなる。さらに、筋肉をきたえ、姿勢とバランスをよくすることで、転倒のリスクが下がる。そして、安全な靴をはくようにする。

住宅の安全を確保する。(廊下からはコード、箱、新聞などを片付ける。コーヒーテーブル、植木鉢などをよく歩く所に置かない。ラッグには二面テープ、釘、又はノンスリップの裏付けを使う 。床板やカーペットがゆるんだらをすぐ直す。日常生活に使う洋服、お皿、食べものを簡単に手が届くように置く。食べ物や飲み物をこぼしたら、すぐ拭く 。風呂場にスリップ止めのマットを使う。いたるところに照明を配置し、暗がりをつくらないようにする。)

6. 痛みの医療 - 木村

さまざまな痛み止めの薬があるので医師と相談。薬以外にも、次のような対応方法がある。Warm/cold compress。理学療法やストレッチング。超音波をあてる。Massage。Biofeedback。Relaxation/Yoga。催眠療法。

7. 多種類の投薬 - 木村

複数の病気をもちがちの高齢者では、複数の専門医から、それぞればらばらに多数の処方を受けることが多い。薬の相互作用の問題もあって、副作用を生じることも多い。ぜひ、総合的に判断ができる主治医に相談してほしい。

8. 元気なうちの意思表示 - 木村

万が一、大病にかかり意識を消失したり、人工呼吸器につながれて、自分で治療方針を決めることができなくなることは、だれにでも起こりうる。日本では、家族などが、程よい加減に治療方針を決めてくれて、医師もなんとなく程よい加減に采配を振るってくれることが多い。しかし、自己決定権の考えが強いアメリカでは、自分の意思を何らかの形で事前に残しておかないと、スムーズな治療方針の決定ができなくなって困ることになる。

Healthcare Proxy
健康代理人を指定することが、現実的で一番お勧めな方法である。たとえば、健康代理人を自分の夫や妻に指定する場合、病院に備えてある用紙にその旨を記載し、自分の診療録にいれておいてもらう。もしも、自分が病気になって意思表示ができなくなった場合、この文書を根拠に、配偶者が自分に代わって、治療方針をスムーズに決定して、診療を進めてもらうことが可能になる。

会場の様子

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